第58話 王妃の行方

「ええ、相変わらず、モロ宰相のグループが幅をきかせてます」

「モロ宰相か……。私がこちらにいた頃は、3人いる副宰相のひとりだったが、もう宰相か……。私のいた頃も、次の宰相になるのは、モロだといわれていたな」

「……ええ、前の宰相が病に倒れた時、政敵のひとりは汚職で謹慎処分を受けていましたし、もうひとりは、魔物に襲われ、重傷を負っていました。もう、モロの意向にそむける者は残っていませんでした」


 リンダは、ため息をついた。王族の縁戚でもない、下級貴族のモロが、権力の頂点に立つには、強引な手段を用いるしかなかったのだろう。確か、モロ以外の有力者も、モロ以上に女性や亜人に対する差別意識の塊りだった。

 この国は、誰が上に立とうが、あまり変わらない。


「魔法部隊のドイル将軍は、お元気か?」

「元気ですよ。ゴーレムの増産を、宰相から命じられて、四苦八苦してます。――この間なんか、急に大型ゴーレムを何体か、手配しろといわれて、国境から呼び戻したり、替わりの中型ゴーレムを派遣したり、駆けずりまわってましたよ」


「ひょっとして、シエタに送られてきたゴーレムか?」

「たぶん、そうです。シエタ王国の転移魔法陣は、大型ゴーレムでも転移できるのかと訊かれました」

「ふむ。戦闘力では、うちのゴーレムに優っているといっていたな?」


 コイルは、顔の前で手のひらを激しくふった。

「ウソです。誇張していってるだけです。ビエラ殿やリンダ殿のゴーレムとは違います。力だけはありますが、直線的な動きしかできませんし、動き遅いですし。ドイル将軍たちが、負けず嫌いなので、まわりに言いふらしているだけです」


「もう、ゴーレムは帰ってきてるのか?」

 リンダは、ゴーレム使いとして興味があるふうを装って訊いた。

「向こうで、何かあったらしくて、帰ってきたのは、1体だけです。――大変な損失だと、副宰相たちが、騒いでいます。……ですが、騒ぐだけで、何もできないでしょう」

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