第54話 王都に到着

 先頭に立つリンダだけが、フードを背中にまわし顔を出していた。

 シェラは認識遮断の魔法を念入りにかけたうえに、すっぽりとフードを被っている。

 俺は、肩ひも付きの縦じま模様のズボンをはき、上半身は、さっき模様を描いたゴーレムの肌を、そのまま露出した恰好で、ふたりに続いた。


 道をふさぐバリケードの右隅に、ひと一人が通れるくらいの、急造の出入口があって、それを覆う大きな太い木製の板を、ひとが通るときだけ、左に押してずらし、入口を開けていた。

 ドア替わりの板をずらすたびに、地面の砂粒とこすれる、ズズズ、ズズズという音がしている。


 バリケードのこちら側にいる騎士に、リンダが、魔法兵の士官であることを示す身分証をみせた。


 検問所は、拍子抜けするくらい、何事もなく、通れた。

 リンダは、シエタ王国のゴーレム使いとして、ミールの兵士たちにも、その存在を知られているようだ。身分証の名前をみた騎士たちは、あこがれの存在に会ったときのような、興奮した様子をみせた。

 ゴーレムである俺が一緒だったことも、著名なゴーレム使いの証明になったらしい。


 リンダが、国境警備の騎士たちに交渉すると、ミールの王都までの、小型の馬車を一台、借りることができた。


 俺は、御者として馬を操り、リンダと従者の恰好をしたシェラが、馬車の箱のなかで、これからの予定について話し合っていた。

 馬の操り方は、復旧工事のなかで覚えた。荷馬車を操る機会が何度かあったのだ。

 何度も動かない馬をなだめたり、叱ったりして、馬の性質のことも、ほんの少し理解できるようになった。


 王都へは、三日で着いた。

 道中では、魔物に数匹出会っただけで、そいつらもそれほど強くなく、俺とリンダが倒し、魔力を浪費せず王都に着くことができた。


 さて、国王たちの居場所を、どうにかして突き止めなければならない。

 

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