第51話 国王たちの行方
リンダは、大きく息を吐いて、続けた。
「でも、ミールにあなたを嫁がせようとしていること、……背後に、ミールの宰相がいることを知って、考え直したの。その時に、あなたの姉上から密かに連絡があって……。わたしのことを、信頼してくれていることがわかって、協力することにしたのよ。姉上は、わたしに賭けてくれた……。それが嬉しかったの」
リンダは照れながら、それでも魔法兵でありながらも国王側につくことを、はっきりと語った。
「あなたが騎士の時代から、知ってるもの。……きっと味方になってくれると思ってたわ」
シェラの姉上は、微笑みながら、リンダに語りかけた。
「今回、たまたま、わたしが善人だっただけですよ。姫様」
リンダは、たしなめるようにいうが、眼が笑っている。
「その呼び方はやめて……。わたしは、もうお姫様じゃないわ」
シェラの姉は、笑いながら、リンダをにらむ。
「これは失礼しました。わたしのなかでは、いつまでも、ニコニコして王都を走りまわっている、小さな姫様のままなので……」
リンダはあやまったが、顔はニコニコ笑っており、これからも呼び方を変えそうになかった。
「父上や、母上も無事ですか?」
シェラが訊くと、
「わからない。……そのことで、あなたに相談があるの」
シェラの姉は、眉間にしわをよせ、深いため息をついた。
「王宮のなかを、くまなく探したんだけど、母上たちはどこにも居なかった」
シェラの姉は、暗い顔でうつむき、また顔をあげた。
「捕らえたミール国の使節団のひとりから、聞き出したの。……どうやら、父上と母上は、ミール国に連れていかれたらしいの」
「そんな! でも、今から兵を派遣すれば、国境を越える前に捕まえられるのでは?」
シェラは、大声を出した。
「転移陣が、王宮内の魔法兵の宿泊所に作られていたの。――ミール国内に、転移させられた可能性が高いわ。すぐに転移して後を追おうとしたんだけど、転移陣は呪文を唱えても反応しなかった。向こう側の転移陣が、壊されているみたいなの」
「それで、……お願いがあるの」
シェラの姉は、ためらいながら、国王たちを助けに、ミールへ行ってもらえないかと、頼んできた。
「危険なことは、わかっているの。でも、そのゴーレム――コウヘイ君といっしょなら、なんとかなるんじゃないかと思うの」
「私も、いっしょに行くつもりだ! コウヘイの力を、もっと知りたいからな。ああ、もちろん、王妃や国王陛下のことも、心配だが――」
リンダは、どうも、まだ、コウヘイのことを研究したいらしい。
「わかりました。コウヘイ共々、全力をつくします。――コウヘイも良いよね!?」
シェラは、決意を述べると、俺が行くのは当たり前のように、こちらを向いた。
俺は、ギギっという音を発しながら首を動かし、うなずいた。
俺が2体のゴーレムにまたがって存在していることを、リンダに気づかれたのかもしれない。が、リンダが信用できる人間であることは、ここ何日間か観察していて、わかっていた。
「必ず、陛下たちを連れて帰ります」
俺も、低い声で決意を述べた。
シェラの姉が眼を見開き、口を大きく開けた。
「――コウヘイ君、喋れるのね」
そうして、リンダをみた。
リンダは、頭をかいて苦笑いしている。
「私が直してから、ひと言も話さなかったから。……喋れたんだな」
シェラが、大きな声で笑った。
久しぶりの、気持ちのこもった、心からの笑いだった。
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