第48話 仲間たち

 俺は、王都の防壁の外から、転移で王宮に入ったので、王都の街なかを歩くのは初めてで、この世界で経験する最大規模の、互いに喋りながら、道いっぱいに広がり歩きまわる多数の人間――人ゴミ(群衆)をみた。


 俺が、呆然と人ゴミをみていると、シェラに袖を引っ張られた。

「――こっちよ!」

 シェラは、明確に行先への道筋を把握しているらしく、人ゴミをかきわけ、迷いなく歩いてゆく。

「どこへ向かってるんだ?」

「知り合いのところ……王城を抜け出して、歩き回って疲れたら、そこで休んでたの」


 人ゴミを避けながら、しばらく歩くと、広い通りの両側に大きな商店が、ズラッと並ぶ大通りに出た。今まで歩いていた通りより、さらに広い。2倍はありそうだった。にもかかわらず、さらに人が増えていた。


 肩が時々、通行人の身体や、カバンなどの持ち物に当たったが、誰も怒ったりせず、俺を無視して通り過ぎてゆく。

 ゴーレムだから、しょうがないか。……溜め息をつきながら、先に進むシェラのあとを追った。


 シェラは、どんどん歩いてゆき、ある商店の前で立ち止まった。

 素早く呪文を唱え、重そうな木製のドアを開けた。


 元の世界でいえば、ブランドショップ――のようなものだろうか? 様々な服が、枝のような横棒を十本近く生やした衣類掛けに掛けられて、店の奥まで、ところせましと並んでいる。元の世界のショップには必ずあった、マネキンの類(たぐい)は、みつからなかった。大型の人形を作って服を着せ、展示するという商習慣は、この世界にはないみたいだ。


 シェラは、服をかきわけるようにして、店の奥に進んでゆく。

「いらっしゃいませ」

 赤茶色の、腰まで届く長い髪を持つ、女性が、ふいに現れて、声をかけてきた。


「ライナ!」

 シェラが、飛びつくように、その女性に抱きついた。

「王宮に、魔法兵たちが攻め入って、激しい音がするので、心配していたんです」

 女性も抱き返しながら、いった。

 シェラは、俺の方に振り返った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る