第44話 ゴーレム対ゴーレム 2
巨大ゴーレムは、俺だった。
婚約披露パーティの会場内の四隅に立っていたゴーレムのひとつだった。俺の意識と結びついたゴーレムで、いまも、その巨大ゴーレムの眼からみた俺(等身大)や、ランガの操るゴーレムがみえていた。
俺(等身大)は、俺(巨大)に、あとを追わせていたのだ。
かろうじて、叩きつけてくるゴーレムの手から逃れた俺(等身大)は、ゴーレムを無視して、シェラを目指し、突進した。
敵のゴーレムは、素早く身体の向きを変え、俺(等身大)に手を伸ばした。
その、伸ばした腕を、俺(巨大)は、右手でつかんだ。つかんだ腕を思い切り引いて距離をつめ、俺(巨大)の腕から逃れようと暴れる敵ゴーレムの喉に、左手の拳を叩きつけた。
喉は、ぐしゃっという嫌な音とともにへこみ、へこみの底が、タテに割れた。
――音が消えた。
俺(等身大)は、新たなゴーレムの出現にあわてている、シェラのそばの魔法兵たちを、伸ばした長い腕で突き飛ばした。
おそらく、ろくに格闘戦もしたことのない魔法兵たちは、よけることもできず、地面に叩きつけられ、悲鳴をあげた。
俺(等身大)は、シェラを抱えあげ、建物の外へ走りでた。
王城の外から魔法兵の援軍がきたらしく、魔法の炎が、いたるところで、あがっている。
シエタ兵と魔法兵の戦いは、五分五分といったところだろうか。同じ国の兵隊同士が戦い、互いに消耗している。こんなところに、他国の軍が攻めてきたら、あっという間に負けてしまう……何とかできないのだろうか。
俺は、王宮の庭園の林のなかに隠れると、シェラを肩からおろした。
「王城から出る道順は、わかるか?」
「ちょっと待って、息をつかせて……」
シェラは、座りこみ、あえいでいる。数回、深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
「王城から出るのは簡単よ。わたししか知らない抜け道があるの」
シェラは、地面に、指で図を描きながら説明してくれた。
ここから近い、王城の見張塔のひとつの地下に、王城の外へ出られる、秘密の地下道があるのだという。
「子供のころに姉上に教えてもらったの。姉上は、亡くなったおばあさまから、聞いたそうなの。――城の生活は、窮屈だから、たまには、抜け出しなさいって……。姉上は、おばあさまの忠実な部下の女騎士に護衛してもらって、時々、息抜きに王城の外を歩いたんですって……」
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