第35話 シェラとの再会
弟子たち全員が、パッと台から離れた。
俺は、ギイギイと首を力ずくで動かし、顔の向きと角度を変え、台の上に起き上がった「コウヘイ」をみおろした。
俺は、顔を斜め上に傾け、みあげた。大型ゴーレムがみえた。
これはいったい――?。
俺は、今「コウヘイ」ゴーレムからみあげている。それなのに、大型ゴーレムから、魔法使いたちと「コウヘイ」を、みおろしている。
さっきは、4つの眼を持ち、視点が切り替わっている感じがしていた。
が、いまは、大きなひとつの眼で、大型ゴーレムと「コウヘイ」のみているモノを、まとめて、同時にみているようだった。
ピンポーン。
ピンポーン。
――同質体の修復への貢献ポイントが加算されました。
ピンポーン。
――修復貢献ポイントが加算されました。
――借り:330 貸し:310
――転移第七期純益:-20 負債:+20
ピンポーン
俺は、新たな視界・意識の広がりにめまいを覚えながら、久しぶりに体験するコウヘイの身体を動かした。
台のうえに片手をついて、身体をななめ前にかたむけ、両足を少しづつずらし、台から腰の半分をはみださせると、ゆっくりと慎重に床に、足をおろした。床に足がつくと、片足づつ徐々に力を入れてゆき、ついに立ち上がった。
みていた弟子たちから、歓声が起こった。
リンダが、こぶしを振り上げ、何か叫んでいる。部屋中が、興奮の渦に巻き込まれていた。
少し落ち着くと、リンダは、俺にいろいろな動作をさせ、思い通りに動くか、弟子たちとともにチェックした。また、太い金属の棒や剣でコウヘイの身体を押したりたたいたりして、身体全体の強度を調べた。
すべてのチェックが終わると、リンダは満足気にうなずいた。
翌日、リンダは、「コウヘイ」(俺)を連れてゴーレム室を出た。楽しそうに、意気揚々と歩いていく。
どこへ行こうとしているのか、予測はついた。
シェラのもとへ行こうとしているにちがいない。
生き返った俺をみせつけ、シェラの優しいゴーレムへの思慕を打ち砕こうとしているのだ。今の俺は、2体にまたがって憑依しているせいで、魔力がたりないのか、話すことができない。うなり声さえも出せず、ヒューヒューと空気が喉を通るときの摩擦音、低いふいごのような音しか出せなかった。なんとかしたいが、焦るだけで、どうにもならなかった。
城の窓のある明るい回廊を登り、数階登ったあと、採光の悪いうす暗い通路に入った。リンダは、まったく迷うことなく、右に左に通路を曲がり、ある部屋の扉の前で立ち止まった。
俺の方を向き、
「――変ね。前に傾いてる」
リンダは、首をひねりながら、俺の背中を呪文を呟きつつ、たたいた。俺には、すでにリンダの命令は効かない。が、何を命じているかは、わかった。
背筋を伸ばし、姿勢を良くした。長く歩きつづけると、人間のときの猫背で歩く癖が、出てしまう。気をつけなければならない。
リンダが、ノックもせずに扉を開けた。
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