第26話 追手
「どう? ピッタリよ!」
俺は防具を、自分で叩いてみた。大きすぎて、防具の胸当てや腹当てが、ゆれたりしないか確認した。着ている服との隙間も、ちょうど良いぐあいで、本当にしっくりくる。これなら、激しく動いても、ずれることなく皮膚を守ってくれる。
この世界に来てから、魔法に驚くのは何度目だろう。こんな魔法があるなら、衣服の寸法合わせの作業が、まったくいらなくなる。
シェラに防具代を払ってもらい、武器屋を出た。中央広場まで戻ったときには、すっかり陽が傾いていた。
都市の出入口に向かったとき、前方から、地響きと、うなるような声が聞こえた。
俺とシェラは、向こうからやってくる、数体の大型のゴーレムに気づいた。大型ゴーレムたちは、同じタイミングで、足の上げ下げを行って、力強く地面を踏み、大きな振動とゴーレムの周囲に注意をうながす、うなるような声を発生させていた。
急いで、シェラの手をひっぱり、道の脇へよけた。
大型ゴーレム3体が、前を通りすぎた。先頭のゴーレムの肩に、黒いマントをはおり、フードを被った、男か女か判別しがたい何者かが乗っていた。ゴーレムを操っている術者に違いなかった。
シェラが、ぎゅっとしがみついてきた。身体がぶるぶる震えている。
「どうしたんだ?」
「あれよ! あのゴーレム……ビエラ姉さまの家を襲ったのは、あれよ!」
俺は、遠ざかってゆくゴーレムたちを眼で追った。幸い、こちらには、まったく気づいていないようだ。
同じようにゴーレムをよけた人たちの、話し声が、すぐ横から聞こえた。
――魔法軍のゴーレム部隊だ。
――でかいな! あんなのが暴れまわったら、騎士様でも、ひとたまりもないぞ。
軍のゴーレムだったのか? じゃあ、ビエラの家を襲ったのは、軍隊か?
遠く離れた王都での、魔法軍のクーデターが関わっているのだろうか?
「やっぱり、わたしのせい……。ビエラ姉さまは、わたしのせいで……」
シェラが、震える声でいう。
ビエラのところにシェラが逃げ込んでいると思って、シェラをつかまえるために、襲ったのに違いないという。
俺は、首をひねった。ゴーレムの首なので、ギイギイと音がした。
シェラひとりのために、そこまでするのだろうか? 国王と王妃はつかまえているのだ。王女までつかまえる――辺境に軍隊を派遣してまでやるだろうか?
「いたぞ? こっちだ!」
ふいに、俺の前を通りすぎたフードをかぶった男が、ふりかえって叫んだ。
「偵察隊! もぐりこませてたんだ!」
シェラが伏せていた顔をあげた。俺の腕をつかんで、逃げようと引っぱった。
あっというまに、商人や農民の風体をしているが眼の鋭い男たちが、俺とシェラを取りかこんだ。
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