第23話 都市ナーダ

 ピンポーン。

――害獣処理ポイントが加算されました。

 ピンポーン。

――害獣処理ポイントが加算されました。

――借り:300  貸し:315

――転移第二期純益:+15 負債:-15

――転移帰還ポイントを越えています。帰還しますか?

  はい。いいえ。 で回答してください。

――回答のない場合は、主存在ビエラの初期設定により、自動的に転移帰還します。

 俺は、また小声で答えた。

「いいえ」

――回答を了承しました。

――主存在ビエラの初期設定により、純益を、魔力強化・人体変成の割り当て標準ポイントに達するまで、蓄積します。

 ピンポーン。


 シェラが、青ざめた顔で、俺の腕に魔布を巻いている。

「大丈夫? 魔力はたりてる?」

「大丈夫だ。魔力は、眠れば回復する」

「無茶はしないで――」

 シェラは、本当にあぶないときは、逃げていいからと、何度も念を押した。

 魔物を倒すごとに、ピンポーンというお知らせが届き、そのたびに、俺は「いいえ」と答え、転移帰還をあとまわしにした。


 三日を費やして、森をやっと抜けた。

 遠くに城塞都市の防御壁がみえた。あせた赤茶色のレンガが隙間なく積み重ねられた壁。魔物が大軍で押し寄せても、びくともしないようにみえる。そばまで行ったら、軽く叩いて、どのくらいの強度か確かめてみたい。


 クーデターの影響は、この辺りまで届いているんだろうか? ビエラは、この辺りは、王都を中心とする人の多い地方からみたら、辺境の地で、遅れた地域とみられていると話していた。――王都で何が起ころうと、何も変わらない、進歩や発展というものから取り残された地域だと。


 政変があって、領主が替わっても、よほどの悪政をしない限り、この地に住む人々は気にしない。

 とはいえ、クーデター軍から、逃げた王族を捕らえよという命令が、発令されている可能性はある。

 シェラと都市の壁のなかに入ったとたん、捕まるかもしれない。


 俺は、シェラに相談した。

 シェラもこの辺りの都市のことはよく知らないらしく、できれば、避けた方がよいという。街道沿いの都市を避けて王都へ向かう、裏街道の道筋はわかっているから、そちらを通ろうという。

 ただ、食料が減ってきており、水も必要だった。俺は、問題ないが、今の乏しい糧食では、シェラの身体がもたないだろう。

 俺は、シェラを壁の外に待たせて、単独で都市内に入り、必要なものを買い求めることにしようと、シェラにその話をした。


 シェラは、頑として待つことを拒否した。

 俺は説得しようとしたが、泣きそうな顔で、ひとりで待つのは耐えられないといわれると、シェラを連れて、都市内に入るしかなかった。

 平気な顔をしていたから、気づかなかったが、護衛をしていたゴーレムのサディが死んだ(元々生き物ではないのだが)ことが、そうとうこたえているようだった。


 都市――入口の上に描かれた防御壁の文字をシェラに読んでもらうと、ナーダという名前の都市だった。

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