第20話 森林地帯

 うっそうとした森林が続いていた。

 どれくらい歩いただろう……。

 シェラに案内してもらっている林道は、道幅が、ぎりぎり普通の人間二人の幅ぐらいしかなく、狭かった。

 とがった木の根の飛びだし、ごつごつした岩の突きだし、湿った地面を覆う苔、つぶれた虫の死骸など――転ばないよう常に気をつけなければならず、歩きにくかった。

 木々の根元に生えている雑草は、固い茎ととげのような葉を、道に向かってうるさいぐらい突き出し、ゴーレムでなければ、ひっかけたり、こすったりして傷ができそうだ。


 いつも転移魔法陣で移動していたので、まわりを覆う森林が、これほど濃密な濃い緑の世界だとは、知らなかった。

 垂直に伸びた木はほとんどなく、曲がりくねり、ときには真横に伸びている幹、幹にからみついた蔓と、そこから生えている巨大な葉や、青と黄色の入り混じった花々。ぎざぎざした扇状の葉を持つ低木群。

 多彩な、名前も知らない草木が、葉と枝の隙間から、かろうじて差しこむ陽ざしの下で、気の遠くなるほど、果てしなく、続いているようにみえた。


 永遠に森林が続くような錯覚に、ため息をついていると、前を歩いているシェラが、ふらふらしているのに、気づいた。

「……疲れたのか?」

 シェラは、振り向くと首をふった。が、疲れているのは、明らかだった。

「少し、休んだほうがいい」

 シェラはまた首をふり、歩き続けようとする。


 俺は、追いつき、ひょいと彼女を右肩に乗せた

「やめてっ」

 シェラは、足をバタバタさせる。

 俺は、口に指をあて、小声でなだめるようにいった。

「しっ! 誰かが後にいる」

 シェラは、すぐに動きを止めた。何か、呪文を唱えている。

「ほんとだ……。強い魔力を持った生き物がいる」

 シェラも、小声で返してきた。

  

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