第12話 襲撃事件
部屋のひとつをのぞき込むと、俺は息をのんだ。
魔術道具や、装備品の倉庫だったに違いない。
部屋のなかには、たくさんの棚や衝立て、机や椅子が、真ん中から折れて壊れ、倒れていた。棚から落ちて、割れたりくだけたりした雑多な魔法用品で、足の踏み場がない。
散らばった魔術道具をよけて、慎重に歩を進め部屋に入ると、破片と破片のあいだから、ひとの腕のようなものがみえた。
ビエラか?
俺のゴーレム心臓の鼓動が激しくなった。
近づいて破片を取りのぞくと、腕だけしかなかった。俺と同じゴーレムの腕だ。腕のまわりには、血のように赤い液体が飛び散っている。
ゴーレムの体液だった。
土木作業中に、下半身を岩につぶされたゴーレムの身体を見たことがある。つぶされへしゃげた部位から、赤い体液が漏れ出ていた。
他にも、ゴーレムのちぎれた身体の部位が、足や腰、腹や肩の断片が、破片や折れた棚の下から見つかった。
何者かがこの家を襲い、ビエラを連れ去ったようだった。ビエラもゴーレムたちを動かし、必死に防戦したのだろう。
どうして、転移して逃げなかったのか? 転移する間もないくらい、迅速な攻撃だったのか? だとしたら、襲ってきた相手はそうとうな荒事のプロにちがいない。
他の部屋もまわった。どの部屋も、据付けの家具が放り出され、壊され、その残骸が部屋中に散らばっていた。
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