第11話 行方不明
「ビエラは、ここではエライのか?」
「尊敬しています。自らの負債がふえるのも構わずに様々な魔法の開発、実験を行ってくださって……。ビエラ殿の開発した魔法のおかげで、助かった人は大勢います」
「魔法の開発を行うと、負債が増えるのか?」
「開発に失敗はつきものですから……。魔法の実験で失敗すると、一気に世界への負債が増えるんです。魔法は環境に大きく作用しますから」
なるほど、それでビエラは、他の世界から負債を返すための助っ人を呼んでいるのか。伯父さんが協力して負債をゼロにしても、また魔法でやらかして負債が増えると……そうすると、また外界から助っ人を呼ぶと……どうやら、ビエラはそんなことを繰り返しているらしい。
「このところ、大きな嵐が多数発生していますし、魔物の暴虐も激しい。ビエラ殿のような腕のある魔法使いがもっといてくれればよいのですが……」
ホーンは、眉間にしわを寄せ、ため息をついている。
「領主は、何もしてくれないのか?」
「ここは、国王陛下の直轄領です。政務に忙しくされているのか、被害を訴えても、何もしてくれません。ビエラ殿は、魔法の訓練でこの地に長く滞在していたことがあって、その縁で、無報酬で助けてくださっているのです。もちろん、負債も減らせますしね」
ふ~む。世界に負債があって、なんらかの貢献を世界に対してしなければ、負債が減らないというのは、災害への対応とか、人に善行をうながすのには、良い仕組みかもしれない。
ただ、俺のような怠け者にはきつい。負債が減らないまま、一生を過ごしてしまう気がする。この世界の人たちはみんな、働き者なんだろう。
土砂のかたづけが一段落し、激しい水流にえぐられていくつもの溝ができた道の整備に入った頃だった。
負債も順調に減っていて、残り100を切っていた。
作業を終えた俺が、ビエラの家に戻ってくると、いつも転移室で出迎えるビエラがいない。
まあ、何か用事でもあったんだろうと、転移室を出て、いつも睡眠時に横たわる、ゴーレム室に戻った。
――おかしい。何か雰囲気が異様だった。ゴーレム室には、数体の稼働前のゴーレムの身体があったはずだが、一体も残っていなかった。
それに、床に赤黒いしみがあった。しみは、一か所だけでなく、壁も含めて何か所もある。まるで、血が飛び散ったようだった。
俺は、部屋を出て、家じゅうをまわり、ビエラを探した。出かけたにしても、伝言を残していくはずだ。最初、いきなり何もない空中から、伝言の声が聞こえたときには、心臓が止まるほどびっくりしたが。
日頃、気になっていた鍵のかかったいくつかの部屋のドアが、半開きになっていた。
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