第5話 負わされた負債

 世界に対する負債……よくわからない。

 世界に住み続けるための家賃、みたいなものだろうか?

 いや、税金か?

 どうも、イメージがわかない。

 そもそも、借金を回収するのは、誰なのだろう。

 ひょっとして、神様? 

 もしくは、世界そのものが人格を持っている?


「収益を持ったまま亡くなった者は、再び、人間に転生できるのじゃ。それも、有利な条件でな」

「逆に借金を、負債を背負ったまま亡くなる者もおる。そのような者は、次の転生で、動物や虫に生まれ変わる。そこで、虫や動物としての負債を背負って生まれ、やり直すのじゃ。……なに、動物や虫は、ただ、本能のままに生きれば、それが世界を豊かにすることにつながる。人間よりは、はるかに負債を返しやすい」 

「負債を返してゆくのは、世界へということだけど、神様に返すのか?」

「返すのは、神様の出納係へじゃ」

「出納係?」

「神様の出納係殿は、常に人間界を監視し、負債の増えすぎた人間を死に導くのじゃ。」 

 出納係というより、死神じゃないのか、そいつ。

「他の世界から呼び込んだ魂を持つモノも、むろん、この世界に来た時点で負債を背負う。違うのは、呼び出した人間の負債をともに背負うことになる点じゃ」

 老女は、自分が説明したことを、本当に理解したか、確かめるように俺をにらんだ。


「他の世界から来たモノは、呼びだした人間の負債をともに背負う。……つまり、通常は一人で返さねばならぬ負債を、二人で返していくことになるのじゃ。呼びだした者は、早く負債をなくすことができる」

 ちょっと待て。

 ……ということは。

「俺は、借金を半分、押し付けられたのか?」

 老女はニヤッと笑うと、

「その通りじゃ。……まあ、よろしく頼む」

 借りてもいない負債を背負うなんて、まっぴらごめんだ。

「おい、元の世界へ戻せ。自分の負債は自分でどうにかしろ!」

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