第4話 転移の理由
「なんで、俺が……」
俺は、混乱する気持ちを抑えて、なぜ自分がゴーレムといわれる魔物のなかにいるのか尋ねた。声が震え、どもってしまう。
「ヨーゾーを呼び込んだつもりだったんじゃが……。魂の質が似ておったのじゃろう。転移門の近くにいたおまえを、間違って呼び込んでしまったようじゃ」
転移門?
あの衝立がそうだったんだろうか。
伯父がどこかで買ってきた、あれが、この世界との接点になっていたのか?
「転移門は、こちらから送ったら、あとは、運まかせじゃ。むしろ、ヨーゾーの知り合いであったことを、喜ばなけりゃなるまい」
老女は、三十個近くを、俺たちの世界に送ったのだという。たまたまそれを手に入れ、たまたまこちらの世界へ来れる魂の資質を持っていた伯父さんが(好奇心旺盛な人だった)、俺と同じように、こちらの世界にやってきたらしい。
「伯父さんも、ゴーレムになったのか?」
老女は、うなずいた。
「その通りじゃ。呼びこめるのは魂だけじゃからの。魂を入れる器として用意したのが、この等身大ゴーレムじゃ」
「なんで、別の世界から、魂を呼びこむ?」
俺は、怒るよりも、不思議でしかたがなかった。ギイイッという音と微妙な振動を感じながら、腕を前後に動かした。
「負債を、借金を返すためじゃ」
「借金?……誰から借りた?」
「この世界そのものからじゃ」
「この世界?」
世界からの借金って、どういうことだろう。
「この世界に生まれた者たちは、生まれた時から、世界への借金を背負っているのじゃ。……この世界へ貢献するかどうかによって、借金は増減し、場合によっては、貢献による加算が借金を上回り、収益が出る場合もあるのじゃ」
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