05 恐らくはあっただろう、過去の戦争を考える

ショウは住んでいた世界の終焉の事実を世界アカシック記録レコードで知ることとなった。その余りにも非現実的な現実を目の当たりにしたショウは、暫しの放心に至る…。そして何を思うのか…

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- 真実を知ったショウ -


「あ~…、う~…、そっか…、俺以外…、みんな…、もう…」


今度こそ、孤独だと…。もう、知ってる顔は全て居ないのだと…。思い知らされるショウ。元々、知り合いは少ない。学生時代のクラスメイトなどは卒業してしまえば連絡も無い上に近所に住んでいるであろう小学生時代のクラスメイトですら仕事で出ていれば出会うことは皆無だ…


「ん?…仕事?…俺は…学生じゃなかったのか?」


今更ながら転移…いや、転生前の記憶が蘇ってきた。そう…世界アカシック記録レコードに触れたお陰で、欠けた記憶が蘇りつつあるのだ。元々は覚えている記憶ではあるが、開きにくくなった引出しがスムーズに開け閉めできるようになったといった方が正しいのであろうが…


「はぁ…俺は…社会人だったのか。転生した時点で、俺の生命力が一番溢れてる頃の肉体年齢まで戻ったと…成程」


普通、20代前半が肉体的に全盛期の筈だが…余り運動が得意でないショウは高校生くらいの頃の肉体が一番生命力に溢れていたようだ。学校では体育の授業があり無理にでも体を動かしていたこともあるが、毎日遅刻寸前で走っていたせいで…後はいわずともわかるだろう。


「…ま、会社勤めを始めたら一気に体重増えたもんな…。運動不足と経済的に余裕が出て買い食いばっかしてたし…」


ありがちな理由であった。仕事で疲れて帰宅した上で運動を欠かさない意識高い系でもなかったショウは太っていたようだ。



- 世界アカシック記録レコードを利用しよう! -


「さて…と。取り敢えず今必要な情報を取り込めないかな…。アクセス!」


かなりいい加減な検索条件だが、これから生きて行く上で必要な情報や、この世界の必要最低限の情報。前の世界でのあらゆる情報は取捨選択されて…自らの固有情報領域へ複写されていった。


「え?…固有情報領域?」



〈わかり易い例えでいえば、霊的な副脳ともいえます〉



「霊的な…?」



〈肉体的な脳髄とは違い、情報のみを扱う実体が無い電脳といえば理解しやすいでしょうか?〉



要は実体が無いPCが俺に憑いているようなものらしい。俺が「あれって何だっけ?」と考えるだけで情報を検索してくれ、「あぁそうそう、これだった」と思い出して利用する…みたいな使い方ができるようだ。


「成程…便利なもんだな。じゃ…」


俺は世界アカシック記録レコードの領域から徐々に戻りつつ、この世界について色々と思い出す・・・・・・・ことにした。



- 初めての召喚! -


「成程…そういう世界なのか…」


魔導自動車の中で目を覚ました俺は、世界をるに至った。流石に元の世界を再構築する方法や元に戻すだけの方法などはわからない。世界アカシック記録レコードにすらそんな方法は記されてなかったからな。だが…


「取り敢えずサポートする人員は召喚よびだすことは、可能か」


魔導自動車から外に出て、ショウはこう念じた。


(従者召喚…召喚対象…「多嶋 薫たじま かおる」!)


その直後、以前は勝手に現れたせいなのか描写されなかった魔法陣が地面に描かれる。初めての任意召喚魔法陣の発動で、比較的ゆっくりとだが…複雑な魔法陣が描かれて行く!


「…遅ぉ~い!」


カオルは魔法陣の中央部に頭からゆっくりとせり上って来て…全身が現れると、そう文句をいいながら両腕を腰に付けてぷんぷんと怒ったていで、可愛らしく頬をぷく~と膨らませているが…目が怒ってはいなかった。


「すまん…遅れた」


ショウはどう対処していいかわからず、取り敢えず謝罪する。と、カオルは両の目から光る雫を零しながらショウに駆け寄る。


「ん…許す」


ぽふんという表現がしっくりする勢いで2人の影が1つに合わさり、暫くの間…抱擁の時を過ごしたのだった。



- そして車中の人に! -


「ふぅ~ん…」


ショウはこれまでに知り得た情報をカオルに伝える。だが、興味が無いとばかりに先の台詞を吐いたカオルはショウの膝の上でゴロゴロしている。今、2人は魔導自動車の中の人であり、取り敢えず人類が居るであろう地下コロニーへと向かって走らせている。カオルは助手席ではなく、ショウの座席に…正確にはショウの膝の上にちょこんと座っているという訳だ。


「なぁ…折角助手席があるんだし…」


「や!」


「や!…じゃなくてさぁ…はぁ」


何分か置きにカオルを説得するが拒否されるショウ。勿論、痺れかけている足の上からどいてくれってことであるが、全否定されて今に至る。いざという時に足が痺れていて行動が起こせないとあれば困るのだが。まぁ麻痺解除で足の痺れは取れるだろう…


「…そろそろこの世界の人たちが隠れている地下コロニーのそばだからさ…」


そこまでいうと、何をいいたいか察したカオルは不満顔をしつつも、渋々助手席へと移ってくれた。


(ホッ…)


「じゃ、そろそろ索敵しとこうか…敵対者と思われて攻撃されるかも知れないからな…」


偵察スキルを発動して魔導自動車の周辺を索敵させるショウ。


「2基だけ残って周辺を偵察。他は1km程の周囲を偵察…行け!」


ドローンと呼ばれる形の偵察子機が2基を残して散開して行く。


(…)


今の所は敵影どころか生命体の1体すら見つからない。海が干上がっているので海産物は絶望的だろう。大型の鳥獣が存在する所から推測するに、地上の生物は僅かばかりは生存する…と推測していたが、


世界アカシック記録レコードからの情報と大差なかったな…。水生生物は地下水路や地底湖を住処としている物ならそこそこの数が残存。地上の生物はほぼ絶望的だが、耐久力のある大型獣なら僅かに残存。高山を住処とする大型の鳥獣も同じく僅かに残存。どちらかといえば地底を住処とする生物の方が豊富に残存していると…)


河川や海洋を拠点とする生物は全滅。見事に干上がっている現状を見れば…わからなくもない。原因は世界アカシック記録レコードにも曖昧にしか記録されてなかったが…


(まさか…海を拠点とする知性ある生物からの侵略戦争を端とする戦争があったなんてな…。多分、水を殆ど消し飛ばすような爆弾でも使ったんだろう、な…)


水生生物は水が無ければ生きていけない。人間も似たようなもんだが、地下水でもあれば辛うじて生きていけるからな…


━━━━━━━━━━━━━━━

塩分は?…という突っ込みにはこう返そう…「塩水が無ければ岩塩を使えばいいじゃないの!」と…あ、物を投げないで!(ごんっ(痛ぇっ!))


※海水が蒸発しても元海底には結晶化した塩が残ってますもんね…分子構造さえ変化してなければ、だけど

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