03 生存圏を喪った人々の世界

2度目の世界転生。その瞬間を初めて目の当たりにするショウ。だが、それを考える間もなく襲われて必死に攻撃を回避して撃墜される。辛うじて無事?に大地に降り立ったがこれから先をどうしていいのか途方に暮れるのだった…

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- 世紀末世界だけど、魔法使えるYO! -


見渡す限り岩と砂と火山しかない不毛の大地が占めるこの世界ではあったが、何故か魔素が存在した。そして…


「…むぅ。まさか、魔法が使えるとか…」


錬金術スキルを行使し、剣と魔法の世界でもないので頑丈そうな自動車を作ってみた。動力は何故か存在する魔素…マナとも魔力ともいい換えてもいいが…を燃料とする魔導エンジンだ。効率を考えて普通の4輪駆動で構成要素は軽くて頑丈で魔力伝導効率がいいミスリルをベースにした合金をチョイスした。この世界にそんな金属が存在するかはわからないが…


「うーん…AIとまでは行かないけど…自律行動できる自動運転機能搭載できるとか…前世の自動運転技術を実装って感じなのかねぇ?」


曖昧な指示すら聞いて自動航行できるのは正直有難い。尤も、自動迎撃なんかは無理だが…流石に機関砲などの構造をよく知らないせいか生成できなかったのだ。ハンドガンくらいは恐らく生成できるんだろうが…


(…もしかして)


生成しようとしていたのは実弾を使用した機関砲だ。構造をよく知らないせいで複雑な内部機構が再現できず、見た目…外装だけ似ているモデルガンみたいな物しかできなかった…


(…魔力弾を撃ち出す簡単な構造なら作れるか?)


空気中の魔素を吸収する機構。魔素を魔力弾に変換する機構。狙いを付ける機構。魔力弾を撃ち出す機構。そのように大雑把に頭の中でイメージし…


「魔導機関砲…生成!」


目の前の魔導自動車の天板の上にイメージ通りの魔導機関砲が生成された。


(本当にできやがった…でも、ちゃんと動くのか?)


ショウは動作テストをしようと、適当に狙いを付けて試射をすることにした。


「うわ!?…これは…ガンカメラからの映像か?」


魔導機関砲を動かそうと思った瞬間、視界に別の映像が重ね合わされた。砲身を左右に動けと念じると連動して映像も移動する。


「ふむ…どうやらその通りみたいだな…じゃあ何か標的を…ん?」


何かが見えたがピントが合ってない為に何かの影にしか見えない何かが見える。と思った途端に自動でピントが合い、その姿がはっきりと見えるようになった。


「鳥?…にしてはでっかいような」


ガンカメラからの映像の端には目標までの大まかな距離が表示されている。その数字は10km余りの数字を示していた。


(10kmか…この魔導機関砲はそこまで届くのか?)


実弾の機関砲は10kmの距離は恐らく届かないだろう。口径が大きい戦艦の主砲などはそれこそ数10kmは届くことは知っているが…。質量が殆どないエネルギー弾みたいな魔力弾ならエネルギーが尽きる前なら届くのかも知れない(尤も、当たるだけで倒せるかどうかは別問題だろう…)


(試しに何処まで届くのか知る為にも撃ってみるか…)


途端にターゲットを狙い撃つ為のレティクルが現れ、自動で照準されて自動追尾を開始する。後は、発射のタイミングだけを示せばいいという訳だ。


「…じゃ、はっしゃ」


ぱしゅっ!


ハンドガンをサイレンサーで撃ったよりも控えめな発射音が聞こえ、光弾がゆっくりと回転しながら目標へと向かって飛んでいく。数秒の後、かなり遠くから断末魔らしい叫び声が聞こえて視界からは重ねられていた映像が切れる。どうやら着弾して標的は絶命したようだ。


「ふむ…一応見に行くか…」


俺は魔導自動車に乗り込み、


「撃ち落した獲物の元へ行ってくれ」


…と魔導自動車に命令する。特に返事はないがランプが明滅して了解の意思を示した魔導自動車が発進し、数分後に撃ち落した獲物の元へ到着した。



「お、お~…落ちてるわ…にしても、でっけぇな、これ…」


結構な高さから落ちたせいか、少々部位欠損気味の大型の鳥?が地面に激突して絶命していた。遠距離だったせいで大きさは把握していなかったが、少々予想より大型の鳥…というよりは大型の猛禽類といった方がしっくりするだろう。


「この世界じゃ食料の調達は難しそうだしな…面倒だが回収していくか」


例の収納袋ナップザックを取り出すと鳥を収納する。周囲をきょろきょろ見回し、千切れた部位も回収してまわる。流石に地面に付着した血液や細かいカスなどはそのままにしておいたが…


(う~ん…人間に対して敵対する生物…まぁそんな奴が居たらだけど…が集まってくるのも面倒だしな)


土魔法で穴を掘り、水魔法で空気中から水を生成して鳥の痕跡を洗い流して穴へと流す。


「おし、最後に穴を塞いで終わりっと」


取り敢えず魔導機関砲…の単射モードの試射は終了したのだった…



「…」


あれから数時間経過。魔導自動車は問題なく荒れ地を走破している。今の所は走破性能に問題がなく、燃料としている魔素も空気中から問題なく抽出・蓄積・消費もされていることが確認できた。途中で牛…恐らくは牛の魔物だろう…の群れを見つけたのだが、距離が開き過ぎているのかこちらに気付くこともなくすれ違ったのでそのまま走り続けている。襲ってくれば連射モードの試射もできたのだが、流石に何10頭もの群れ相手には怖かったので良かったと安堵しているが…


「う~ん…しかしあれは何だったんだ?」


(地球が消え去って…何か靄というか…それが拡散したかと思ったら再構成?された??…そして、この世界が現れて…)


理解の範疇を超えた現象を目の当たりにし、ショウは悩む。剣と魔法の世界のようなあの世界は破壊されて、気付いたら空戦戦記っぽい世界になっていた。いや、地面には文明の痕跡が無くて文明の痕跡らしい複葉機に攻撃されたからそう感じただけだが、どちらかというと、普通に呼吸ができる宇宙戦艦YMTの地球みたいな世界だ。


「どうやったらこんな世界ができるのかわからんが…あ゛」


そういえば従者召喚で現れたカオルや、前の世界のシィナさんたちはどうしたんだろう?…と、今更ながら思い出す。


「…」


しかし、その思念に応じて現れる筈もなく。ショウは独り、荒涼たる荒地を魔導自動車で唯々進むのだった…


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人類の生存圏が地下シェルターか上空に浮かんだ人工の浮島のみな世界なので地上を幾ら探しても人っ子1人すら見つかりません(ネタバレ)。冒頭で襲って来た複葉機は浮島から緊急発進スクランブルしてきた迎撃機な訳ですが…実は無人機です(ゴーレムの一種と考えれば相違ないです)一応人類は生き残っているけど、敵対者に対してはかなり過敏に対応するようですね!


※地上と空中は怪物たちのパラダイスとなっており、人類は被捕食者なので地下や高空に逃げ延びるしかないって世界です(何処ぞのラノベでよくある設定ですなw)…水中や海?…ほぼ干上がってて存在しません!

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