14 トチーア町長の印象は…悪かった(但し顔合わせすらしていないw)

早朝のお風呂女子会を経て多少は仲が良くなったシィナとカオル。数日は休息してから再び王都へ立つ予定ではあるが…トラブルに巻き込まれずに一行は旅立てるのであろうか!?(謎

━━━━━━━━━━━━━━━


- トチーア門番、お勧めの宿をチェックアウト -


「う~ん…ふわぁ~…」


ショウが大あくびをしながら宿屋の出入口に立つ。チェックアウトはシィナがやっており、カオルはその隣に立って一緒に清算をしている。


「疲れは抜けたみたいだけど…朝は眠いなぁ…う~んっ…」


宿屋の出入口前に預けていた馬車が回されて停車する。宿屋の従業員が気味が悪いというような表情でゴーレム馬を引いているが慣れてないからだろう。慣れてしまえば飼い葉も食べないし水も飲まない。装着されている魔石の魔力の充填だけ気にしていれば休むことなく働いてくれるのだからこれ以上便利な道具もない。


(…まぁ、体の石材のメンテも必要になるだろうけど魔石に魔力さえ充填してれば勝手に修復するしな…)


結局宿に泊まっている間に1回だけ魔力充填の必要があったのだが、その役目はショウに与えられ、かなりの量が吸われることになり疲弊した上に魔力回復の為の休息も増え、宿泊してる間中寝こけてる羽目に遭った。


(王都に着いて落ち着いたら、魔力を空気中から集めて魔石に充填する魔道具とか作った方が良さそうだな…毎回これじゃやってられないや…)


ゴーレム馬の魔石の容量が結構多かったせいでショウは魔力タンクとしての役目を押し付けられ、1人で苦労する羽目に遭った結果…魔力充填の魔道具を作ると決めたのだった!



「それじゃお世話になりました」


「「た~!」」


内心、


(別れの言葉がそれでいいのか?)


…とシィナが2人にジト目を一瞬だけ向けた後、軽く頭を下げた後に馬車に乗り込んだ。宿の者は全員ではないがショウたちを見送りに出て頭を下げている。ショウたちも手を振っていたが、デュラハン馬車が一定距離を離れてから手を振るのを止めて前を向いた。


「はぁ…毎回これはきついな(ロクに顔を知らない人たちに手を振るとか…)」


大して話したこともなく宿では殆ど寝ていたショウがぼやく。カオルとシィナはそうでもなさそうだが…


「ショウくん宿では殆ど寝てたからねぇ~…まぁしょうがないかな?」


「マスター、どんまい」


自業自得とは思わないでもないが、事情を知っている2人は苦笑いでショウを慰めている。そうこうしてる内にトチーアの門に着き門番に挨拶をすることに。


「先日はお世話になりました!」


「おや、もう出立するのかい?…あぁ、少し待ってくれるか?」


「え?…あ、はい…」


挨拶だけで済むと思ってたのだが何か用事があるようだ。カオルがシィナと顔を見合わせて首を傾げていると門番が戻ってくる。


「先日の盗賊団の討伐報奨金以外に、町長から感謝の印としてこれを預かっていたんだ。預かったのが翌日だったのだが疲れている様子だったので町を出る時でいいだろうということでな…」


手渡された物はずっしりと重そうな革袋だった。


「えっと…中を見てもいいですか?」


「あぁ、構わないぞ。何が入っているかは重さで想像が付くだろうけどな?」


がははは!と笑う門番から馬車から降りたシィナが革袋を受け取る。革ひもで結ばれた口を緩め、少しだけ開けて中を覗くと…


(予想通り、金貨がぎっちりね…というか、こんなに金貨を入れて財政持つのかしら?)


再び皮ひもを締めて口を閉じると、


「町長さんには有難う御座いましたとお礼をお伝え願えますか?…失礼ですがこれでも急ぎの旅ですので…」


言伝を頼むと、


「わかった。旅の無事を祈っているぞ!」


と快い返答を受け取り、一行はそのままトチーアを出ることになった。



「シィナ、何貰ったの?」


門番と話している間は興味が無さそうにしていたカオルだが、革袋を受け取って戻ってくるシィナを見ると革袋の中身には興味が出たらしい。馬車側から戸を開けたシィナが


「見てみたら?」


と革袋を手渡すと、カオルは受け取って皮ひもを緩めて中身を見る。


「…何これ」


限界まで広げられた革袋の中身は…上辺だけ10数枚の金貨が敷き詰められていたが…


「なっ!?」


その下には鉄貨が詰め込められていた…


「別に感謝の印気持ちだからこれって金額はないけど…」


(これじゃまるで騙されたみたいで気分悪い…)


などと考えていたシィナだが、


(普通の規模の町の財政状況を考えればしょうがないか…)


と思い直し、怒りを鎮めることにした。


(ただ…私たちへの報酬がこの程度で済むとかいう風評が広がるのは困るわよね…)


その辺は何か策を打たないと後々困るかもと考えつつ、カオルから革袋を受け取って中身の貨幣を数え始めるシィナ。カオルは暫くその様子を見ていたが、視線を前方に戻して溜息を吐くのだった。


━━━━━━━━━━━━━━━

革袋の内訳は…金貨13枚に鉄貨45枚でした(5千円x13枚+5円x45枚=6万5225円相当)全部金貨なら29万円なので相当の違いがあります。ショウが労働奴隷で金になるからと連行してきたのですが、結局数日しか滞在しないから売却金の受け取り権利を破棄したのでその代わりといえば少々安い(町へ手数料を収める必要があり、そのまま全額受け取れる訳ではない)ですがトントンというべきなのですが、見栄を張って上だけ金貨で隠れた部分を鉄貨で埋めたのでシィナからの印象は悪くなっています(だからそうした?…ともいえますがw)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る