12 町の名は…安直そうな名前だった!?

ハイミト村から王都へ向かうショウ一行。途中、暗い夜道で盗賊団(と思っている)に襲われる。撃退した一行は最寄りの町へとひた走る…夜を徹して…

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- 夜も明けて朝がやってきた… -


「ふぁあ~…朝か…」


眠い目を擦りながら地平線から覗く太陽を見る。まだ地平線に殆どが隠れている為にそれ程眩しくないが赤い光が徐々に左右へと広がっていき、やがて眩しくて直視できなくなるだろう…


(…そーいえばこっちの世界でも太陽っていうんだろうか?)


何となくショウはそう思ったが、実は地球だけが別次元の地球のコピーなだけでそれ以外の天体は変化がない。異世界へ転生したと勘違いしている彼はそのことに気付かないのだが…



数時間後…ショウたち一行は隣町が見える位置に到達していた…とはいえ、まだ外壁が何とか見えてきたというだけで馬車の常識的な速度では2時間は掛かるだろう。


「う~んっ…もう着いたのかしら?」


馬車の方からシィナが顔を出す。捕虜の監視をしていたと思っていたら、ちゃっかり寝ていたようだ。魔力(MP)回復には睡眠は大事なことは理解しているつもりなのでショウは溜息を吐いただけで特にいうことはない。後ろをチラ見した限りでは、カオルが荷車を監視していたようだ。


「あ~…まだですね。このペースなら後2時間ってとこです」


視線を前方に戻しながらそう返すショウ。そろそろ集中力も散漫になって来たし、御者の交代をお願いしたい所だが…


「徹夜での御者お疲れ様。私は無理なのでカオルちゃんに交代をお願いするわね?」


「あ…はい、お願いします…」


引き続き宜しく!…とかいわれなくてホッとするショウ。流石に睡眠不足だけはLv1の回復魔法では回復の方法がなかったのだ。


(HPが減ってる訳じゃないから小回復や体力回復でも効果は薄いしなぁ…)


実際には体力回復でも睡眠不足からくる疲労は軽減してくれるが、眠いのだけは無理だった。Lv2から覚える睡眠解除とLv1の体力回復のコンボで何とかなるといった所か。それでも無理やりであるが故に体に少なくない負担が掛かるだろう…


「ショウくん。交代」


「うい…任せた」


「うん。お休み!」


短いやり取りを終えて、ショウは馬車の寝袋に包まる。先程までシィナが包まっていたものだが疲労でダウンしたショウはそれと気付かずに沈没していった。シィナは暫くその様子を見守っていたが、カオルと交代して盗賊?たちの監視を引き継いだ。尤も、荷車に詰んだ時にカオルが強制催眠で寝かせたお陰で妙な真似をする者もなく、大人しく荷車に積載されているのだが…



「暇ね…」


あれから2時間弱が経過し、ようやく隣町の入り口が見えてきた。


「シィナ、応対は任せた」


「はいはい。カオルちゃんは変なこといわないようにね?」


「むぅ…了解」


カオルは最初の頃に比べてだいぶ無口になっている。この世界を自分なりに理解しようとしているのか最低限の台詞しか口にしなくなり、逆に観察する行動が目立ってきているようだ。


「えっと…確かこの町の名前は…あれ、何だっけ?」


ここ数年、殆どハイミト村から出てないせいかど忘れしている模様。シィナは門のアーチに書かれている文字を見て思い出す。


「あぁ、思い出した…トチーアだった」


ショウが起きていればこう思っただろう…「どんなネーミングセンスやねん!」と…



- トチーア門前 -


「おい、止まれ!」


一行はトチーアの門の前に到着し、門番に停止を命ぜられて馬車を減速・停止させた。


「ん?…後ろのは…おい!」


「はっ!」


訊かれるが答える前に門番たちは馬車後部に連結している荷車を検分に向かう。


「賊か…」


「…ええ。途中で襲われたので返り討ちにした」


シィナが自分が応対するといってたのにカオルが対応している。当のシィナは…いつの間にか寝てしまっていて役立たずと化していた。


「そうか…すまんが嬢ちゃん、馬車は見といてやるからこっちへ来てくれんか?」


「ん、わかった」


門番の長っぽいおやじが手招きし、カオルは付いて行く。恐らくは調書を取ったり賊の賞金の手続きをするのだと思われる。ショウは熟睡して起きず、シィナもショウの傍で爆睡していた。困ったもんである…



- 門番の番小屋 -


「…これでいい?」


「あぁ、それでいい。褒賞金だが、少なくて悪いな。取り敢えず渡せるのはこれだけだ」


「ん、問題ない」


書類には3人の名前と何処から来たのか、賊との遭遇の様子を覚えているだけで構わないというのでカオルは記憶にある限りを書き込んだ。報奨金は賊10人で金貨1枚。労働奴隷として売ればもっと値が張るのだが、この町では奴隷商店が存在しない為に遠くの都市まで運ぶ手間が掛かる。滞在日数が2~3日程度のショウたちでは受け取る暇がない…という訳だ。


「その代わり入町税は無しにしとくから。後、泊まる宿はここに行くといいぞ?…安くて飯も美味い。入浴もできるからご婦人方にも受けがいいからお勧めだぞ?」


風呂があると聞いてカオルはテンションが上がる。ぺこぺことお礼をしてから門番長と別れて馬車へと足取りも軽くスキップして戻るのだった…


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次話はお風呂回かっ!?(多分ショウは男女別に入るからいい目には逢わなさそう…w)

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