10 冒険者ギルド出張所に達成報告…そして王都へ!

害獣退治依頼を終えた後、ギルド出張所に報告。その後、ステータスボード開いて各種スキルの考証?をしてました(ショウなりに)

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- 冒険者ギルド・ハイミト村出張所 -


「依頼達成おめでとうございます!」


いつもの受付嬢から賞賛のお言葉を頂戴するが、その直後の台詞がいけなかった。


「…あら?この子は…お2人の子供?…な訳ないですよね!…あは、あはははは…すみません」


ジト目で睨み付けていると、小さくなってショボンする受付嬢。取り敢えず依頼達成のサインを書いて貰った依頼票を渡すと、規定の報酬を貰ってカウンターを後にする。


「ったくロクなこといわないわね…あいつったら」


今更だが、その言葉を聞いて質問するショウ。


「あいつって…随分と慣れ親しんだ?調子ですけど?」


そういうと、シィナはショウに視線だけ向けながら、


「あ、いってなかったかしら?…彼女と私は…」


話しが長いのでカット。要約すると、2人は出会ったのがこのハイミト村。そこから数年の付き合いで、親友という程ではないけれどあいつ呼ばわりする程度には気安い仲らしい。受付嬢の名前は「クララ」という。小さい頃に足に怪我を負っていて長年寝たきりの生活を送っていたそうだが、数年前にシィナさん一行が特効薬の探索依頼を受けて達成し、足の怪我を完治したのが切っ掛けで友達になり、冒険者の助けになればと受付嬢の仕事を始めて現在に至ると…。いや、要約しても長いよ。


(この世界、微妙に前の地球のアレなこととか混ざってるんだよな…何だろうなぁ?)


次元的に近いということは、色々と漏れていて伝播でんぱするということなのだろう。例え、それがアニ○だろうと…感染うつるんです?…ゲフンゲフン。



「取り敢えず、今回の報酬からショウくんの分はこれだけね」


パーティー共有資金に回した残りを2分割し手渡される。端数が出たが、それは夕食に回すということになった」


「エンバートはまだ3週間後かぁ…戻ってくるの」


それまでこの村でダラダラと待ってるのも何だしなぁ…とシィナは呟く。


「それなら、いっそ追いかけませんか?…王都に出向いたのもカオルのせいですし?」


そうショウがいうと、「ムッ!?…」とカオルがショウを見て睨む。「別にわたしが悪い訳じゃないもん!?」…とでもいいたいようだ。


「悪かった、悪かったってば…まぁ、戻ってくるのを律儀に待ってても無駄でしょうし、王都までの路銀は別に不足はないんでしょう?」


カオルの頭を撫でながらシィナに話すと、今度は「子供じゃないんだから!!」と頭をぶんぶんと振るカオル。今はショウの腕に甘噛みしていて、まるで猫のようである。


「まぁね…でも、大丈夫かしら?…私はともかく、ショウくんとカオルちゃんは長旅は初めてでしょう?」


主に体力のことを案じていってくれてるのだろう。ショウは問題無いといい、明日は旅に必要な物資を買い込むことを提案する。


「そう?…でも、ギルドには報告した方がいいわね。いきなり冒険者が居なくなると困ることもあるから…」


それもそうかということで、Uターンしてギルド出張所に戻って報告をする。そして、一行は預けっぱなしになっていた荷車を回収し、旅に必要な物資を買い集めに村中を歩くのだった。…ちなみに、荷車は裏の広場の片隅にきちんと保管されており、きっちり保管料を取られた…なんてこったい!(自業自得w)



2日後の朝。必要な荷物を積載した荷車を引きながら村を出る一行。まだ朝日が昇って少しくらいの薄暗い中、ゴトゴトと荷車を引くショウ。横を歩くシィナ。荷車に腰掛けるカオル。別に大丈夫だといっていたが、シィナが無理に座らせたのだ。純粋な人間じゃない彼女なら、ショウの代わりに荷車を引いても問題は無いのだが、見た目の問題からこうなっている。


(15歳の金髪碧眼の小柄な美少女に…それも結構な荷物を積載してる荷車を牽かせてたら、唯の虐待に見えるもんな…)


苦笑いを浮かべながら、筋力ステータスにSPを割り振った方がいいかなぁ?…と思いつつ荷車を牽くショウ。恐らくだが暫く荷車を曳いてれば、労働をアシストするスキルが生えるに違いない。筋力増強とか耐久力増強などの肉体労働系に関わるスキルが…


(…さて、この辺でいいかな?上手い具合に村から見えない位置に辿り着いたし)


ショウはシィナに話し掛ける。少々息が上がってるのは仕方ないだろう。何しろ、村からこの辺まで…緩いとはいえ、上り坂だったのだから。


「し…シィナさん。道から外れますが、あっちの方に入って…休憩しません、か?」


シィナは指を向けられた先を見て、


(あぁ、あそこなら丸太とかあるし座って休憩には向いてるかしら?)


と判断して頷く。


「いいわよ。但し20分だけね?」


予定より早めだがショウの顔から流れてる汗や吐息の荒さを見て、少し休憩を入れた方がいいと思ったシィナは提案を許諾。すぐに横道へと入る。


「…」


カオルは何を考えてるのか、周囲を見回しながら無言を貫いていた。



「ふぅ…やっと一息つける」


そんなぼやきをきながら荷車から離れて丸太に座り込むショウ。短時間の戦闘ならいざ知らず、長時間の肉体労働には慣れてないのだろう。手渡され水筒から水を飲み、やや呼吸を荒げて休んでいた。実際、村から出て凡そ3時間といった距離なのだが荷車+積載荷重+カオルの体重は100kgを超えており、とてもじゃないが16歳のもやしっ子には筋力ステータスの恩恵があっても辛いものがあった…


「だから、わたしが牽くっていったのに…」


隣で呟くカオルの言葉は聞こえていたものの、そこは人目も有ったので却下されていたのだ。唯人ではない彼女の膂力は普通の冒険者の数倍もあり、加えて疲れ知らずである。肉体を持つ機械といえばわかり易いだろうか?…つまりはそういうことである。


「はは…まぁ、疲れが抜けたら解決策があるから、気にしないで…」


「そう?…あぁ、そういうことか」


それだけいうとカオルは納得したようである。水筒の水をコップに注ぎ、コクコクと飲み干す。水は魔力を含んでいて、魔力水となっていた。人造人間の体を持つカオルは、それが動力源…所謂エネルギーとなっている。普通の人間が飲んでもMPが回復する訳ではなく、唯の水として摂取するだけだが、カオルにとってはエネルギー補給となる。


「ん…美味しい」


ショウが持っている水筒はカオルの要求で生成した特別製で、水を注ぐと(その辺の川を流れている水でも、魔法で生成した水でも構わない)カオルの体質に沿った魔力水に調整される。勿論、奇麗な水に浄水されるようになっている。見た目はコップが蓋になっている1リットルサイズの魔法瓶だ。


(魔法が掛かっているから、まんま魔法瓶だな…)


尤も、ある程度水温を維持できるのであながち嘘でもないが…


(断熱層が無い魔法瓶って所か?…冷たい水を入れても時間経過で少し温くなるんだよな…まだ検証してないけど)


創造してから数分では検証しようがないとは思う。だが、水魔法が生え…取得できたのは幸いだろう。シィナには「またかっ…またなのかっ!?」と目を剥かれてしまっていたが…



【技術】

固有:錬金術Lv1 武器精錬Lv2 道具精錬Lv1 薬精錬Lv1 鑑定Lv1 全言語読み書きLv1 偵察Lv1 自動回復Lv1 念話Lv1

汎用:盾術Lv1 剣術Lv1 対人戦闘術Lv1 土魔法Lv1 回復魔法Lv1 水魔法Lv1(NEW!)



・水魔法Lv1…水球生成 液体投射 液体生成


・水球生成…無指定で手の平に乗る程度の大きさの水の玉を生成。大きさと重さ(質量・密度)、生成位置も指定できる。液体投射の対象としないまま1分程放置するとその場に落下する

・液体投射…液体ならなんでも投射目標に指定できる。着弾位置を指定すると、障害物に当たらない限り漏らさず指定した液体を目標位置に当てることができる

・液体生成…液体であれば水・お湯など、何でも生成できる(生成する時点で素材を追加すれば、素材に合わせた液体を生成できる)完成した液体は水球生成と同様に1分放置で落下するので、事前に容器を用意する必要がある(その場で飲み干すなら問題はない)



(ん?土魔法より1種類少ないんだな…)


尚、回復魔法は以下のバリエーションがある。



・回復魔法Lv1…小回復 体力回復 毒解除 麻痺解除


・小回復 …目に見える外傷の回復を行う

・体力回復…失われた体力の回復を促す

・毒解除 …体内に潜む毒効果の分解を促し、状態異常を回復する

・麻痺解除…体内に潜む麻痺効果の分解を促し、状態異常を回復する

※各状態の理解が深い程、効果は上昇する



(…この世界って回復魔法にこんなのあるんだろうか?…まぁ、今夜にでもシィナさんに訊いてみるか…)


そろそろ休憩は終わりだと宣言され、俺は重い体を…立たせる前に、ある魔法を行使する。


「体力回復!」


効果はばつぐんだ!


蛇足ながら念話の仕様は以下の通り。



・念話Lv1…念話契約 念話先選択 念話開始・終了 念話先通達


・念話契約…念話をする相手との契約を行う。これをしておかないと、念話ができない

・念話先選択…念話を行う前に念話を行う先を指定する(リスト形式で選択)また、複数選択も可。選択数が多い時は一斉選択も可。また、指定した後にもう1度選択した名前をタップすれば解除も可

・念話開始・終了…開始ボタンをタップするとその時に指定した念話先と念話を開始する(声に出しても良いが、出さずに思念するだけで会話が可能になる)。終了ボタンをタップすると、念話を終了する

・念話先通達…一方的に通達を行う時に使用(送信のみとなる)急ぎ警告したい時、通達先を念じてから思念する…などという時に有用か

※一定距離内ならば契約元は魔力(MP)消費無しに使用可能。契約先からは自己のMPを消費して行使可能。双方共に念話の拒否権はあるが、念話先通達だけは念話契約元のみ使用可で契約先の者は受信拒否はできない(悪意がある場合はその限りではない)。一定距離を超えて行使する場合は、契約元からでもMP消費は必須。消費量は距離に応じて増えるが、レベルが上昇すれば負担は軽減される=未消費距離も延長される(特殊な魔素が薄いなどの区域ではその限りではない)



(さて…と。いつまでも対処療法しててもしょうがないし、根治…ていうのも違うが)


「ちょっと待ってください」


と、シィナに待ったを掛けるショウ。


「ん?…いっとくけど、これ以上時間を掛けてたら次の野営地に間に合わなくなるから…で、何?」


そんなに時間は取らせないからというと、取り敢えず聞く耳を持ってくれたようだ。


「えっとですね…もうちょっとこっち来てくれますか?」


いわれるがままにこちらへと来るシィナ。横に並び立った時点で唱える。


「騎乗物召喚!」


唱えながら思い浮かべる。とにかくこの世界で現れても問題がない、無生物でメンテナンスフリーな乗り物を!…と。…そして、召喚よばレタモノは…2頭立ての6人乗り程の馬車だった。但し、馬車を牽く馬の頭は…首から上は無かった。


「え゛…デュラハン馬車?」


鑑定スキルが勝手に起動して見た詳細は以下の通りだ。



【デュラハン馬車・二頭立て】

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◎見た目がそうなだけのゴーレム馬2頭で牽かれる6人乗り馬車

◎馬は周囲を漂う魔素を吸いながら稼働する為、御者に魔力が殆ど無くとも扱うことは可能(全力運転した場合1時間程で枯渇するので、それ以上の運用には魔力の補給は不可欠となる)

◎魔力の任意補給は御者台に設置した魔力棒を握って補給すると念じればよい

◎ゴーレム馬の首の切れ目から魔素を吸引する為、その部分を塞がないように注意。また、素材は頑丈なだけの石素材である為、耐久力以上の力が加わると破壊される。注意して運用すること

◎馬車部分も同素材でできているのでそれなりに頑丈ではある。が、破壊されるとゴーレム馬と同様に簡単に崩れるので危険と感じたら急いでの下車をお勧めする

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人が乗って運用する物らしく、説明はそこそこ詳しく長かった。問題は…


「馬車って操ったこと、あります?」


「…無いけど」


「はぁ…」


シィナは乗ったことがないらしい。恐らくは馬車の乗客になったことくらいしかないのだろう。う~ん…と考えていると、


「はいはいはい!わたし、御者できるよ?」


と、救いの女神が現れたのである!…それもかなりの美少女だ!!



「…で、何で隣に座らされてるのでしょう?」


かっぽかっぽと二頭の頭無し馬…デュラハン馬風のゴーレム馬の操作を教わりながら御者を恐る恐るしてるショウ。隣では、あーだこーだと手綱たづなの操作方法を教えているカオルが座っている。乗馬と大差はない筈だが、あぶみに足を乗せてないからか幾つかの手綱の操作方法は違うのだろう。何故かカオルは習得していたようだが…


(はて?…俺はそんな設定してなかったと思うんだが…)


首を傾げながらカオル調教s…もとい、カオル教官の指示に従い、ゴーレム馬車を進めていく。やがて、日も傾いてきて辺りに夜のとばりが落ちてくる。赤い夕焼けの空に青が混ざり、段々と暗くなって完全に暗くなると星々が瞬く夜空へと変じていくが…


「何これ?何これ!?」


シィナが興奮気味に訊いている対象は、馬車の左右に設置されて明るく周囲を照らすのはランプ…などではなく、最新式装備の…見た目はランプだが…魔力式LEDライトだった!(一方向だけ照らすサーチライトモードと、周囲を照らすランタンモードの2種搭載!)


「えー、まぁ、ランタン、ですよ?周囲を明るく照らす奴です」


馬車全体の鑑定結果には付属する装備品の細かい説明はされておらず、訊かれてから更に調べて解説する…といった七面倒臭い作業が待っていたが、大勢の人間に話す訳でもなく、まぁいいだろうと説明していたショウ。尚、荷車は邪魔なので錬金術と道具生成のスキルの合わせ技で折り畳みできる仕様に改変して馬車の天井の荷台にロープで固定し、荷物は薬草採取の時に生成した麻袋の上位版…所謂収納袋を生成してそこに全てぶち込んである。見た目は背負い袋…丈夫なナップザックといった見た目をしており、肩掛けしても良し。2つある太目の紐を両肩を通してリュックサックのように背負っても良し。紐を持って手提げ袋のように持ち歩いても良しとなっている。


「この大きさの袋にあの荷物が全部入るなんてねぇ…」


御者席に居るショウに、馬車側の戸口を開けて語り掛けて来るシィナ。御者席と馬車はそれ程高さが変わらない為、戸口を開けて行き来ができる構造となっている。その分、地面から馬車の入り口に高低差ができているので乗る時には短めの階段を下す必要があるのだが。尤も、車輪と馬車本体の間のショックアブソーバ衝撃吸収装置がある為にそのような構造となっている。お陰で普通に運用している分には座席には殆ど揺れも振動も伝わっておらず、シィナは乗り心地は快適だといっている。


(御者台は…寒いぜよ)


雪は降っていないが吹きっさらしの御者台は寒い。振動こそ伝わってないが、寒いものは寒いのだ。


「ん」


何やらもぞもぞとしてるなと思っていたら、カオルがショウの膝上へと乗ってきた。


「えっと…カオルさん?…温かくしてくれるのは有難いのですが?」


語尾が不自然に尻上がりになるショウ。カオルの臀部がショウの股間に乗っていて、温かいのと柔らかいのとで頭に血が上り…


「ちょっ! あんたら何やってんの!?」


地が出たのか、シィナの言葉が汚くなる。


「あっかんべー!」


くるりと座ったまま背後へと振り返り、シィナに向かって舌を出して片目の尻を指で引っ張って馬鹿にするカオル。「うがー!」と唸って御者台へと出て来ようとするシィナをカオルが念動力で抑えて邪魔をする。


「おいおい…夜間走行とか危険なんだから静かにしてくれ…」


2人をたしなめようにも馬車の操作に神経を集中している手前、口しか出せないショウ。こんな感じで大暴れして大声を上げていれば…引き寄せられるのは決まって面倒事だ。


「…はぁ…ん!?…面倒そうなのが来たなぁ…はぁ」


辛うじて飛ばしていた偵察スキル魔力式ドローンから引っ掛かるモノがあったと報告が来る。一行にはトラブルに祝福された珍道中しか用意されてないのかもしれない…合掌。


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ようやく新たな旅立ち!の第2章のサブタイ回収です!…さて、辿り着く前にトラブル勃発の模様。何が現れるのか…それは次話で!(どーせ盗賊とか追い剥ぎだろ…と思った貴方、半分正解!)

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