06 村長宅に行こう!

よくある畑を荒らす害獣退治の依頼を受けた一行。詳細を村長に伺うことになったが…

━━━━━━━━━━━━━━━


- ハイミト村・村長宅 -


「あ~、ここここ。ちょっと待ってね?」


シィナさんの先導でハイミト村の村長宅へ向かった。平屋建ての宿と同じくらいの大きさの建物が見えてきた。場所的には丁度村の中央くらいか?


「あ、はい」


カオルと一緒にやや離れた場所で待つ。村長宅とはいっても村民のほったて小屋よりは立派だけど、豪邸って程じゃあない。建物の時代を感じさせるくたびれ具合はどっこいどっこいだろう。


(害獣に荒らされてる畑ってどこだろうな…)


見えてる範囲内には畑がないので、暫く歩かないといけないのだろう。


(ん~…。期間は2週間前後。害獣を撃退して1週間様子見して被害が出なかったら依頼完了ってことだったな…)


依頼票を見て内容を確認するショウ。カオルは大人しくしているが周囲をキョロキョロと見て目を輝かせている。見知らぬ場所のせいか、色々と珍しいのだろう。


「珍しいのか?」


「うん…。ショウの妄想世界の中だけの記憶はあるんだけどね。異世界って初めてだから」


「妄想いうなし!」


ニヤニヤといやらしい笑顔で返事がきて狼狽するショウ。そうこうしている内にシィナが村長と一緒に出てくる。


「ショウくん。詳細を詰めるからこっち来て?」


「了解」


と、言葉少なに了承するショウ。


「は~い」


カオルは能天気に返事を返してショウの後を付いてくるのだった…



- 村長宅・応接室 -


「シィナさんのパーティーの新しい仲間ですかな? わしはハイミト村の村長を任されているドリア・ミートコンという者だ。宜しく頼む」


軽く頭を下げて自己紹介する村長。


(ドリアって臭いけど美味しい果物だったっけ?…ていうか文字を入れ替えるとミトコンドリアっぽい名前だなぁ…某ゲームみたいな展開じゃなきゃいいけどなぁ…)


…と、どーでもいいことを思いつつ話し合いの内容を聞くことに徹するショウ。カオルは黙ってその辺を物珍しそうに見ているだけだ。主にシィナが村長と今後の方針を話し合っており口を挟む隙が無い。およそ30分程経っただろうか…取り敢えず方針が固まり、一行は村長宅を辞することとなった。決まった内容は以下のようになった。



【害獣退治願】

---------------

依頼主 :ハイミト村 村長「ドリア・ミートコン」

依頼内容:最近畑を荒らす害獣の退治を頼みたい。撃退を基本に可能なら倒すこと

期  限:2週間前後

完了条件:1週間以上畑を荒らす害獣が現れなくなったことで退治完了としたい

---------------


・倒した場合は冒険者ギルドの討伐報酬に沿った報酬を個体数分支払う(その際、討伐部位を忘れず確保すること)

・害獣の正体が不明なこともあり、どんなモンスターが畑を荒らしているか確認すること(正体が判明すれば今後の対処法も決められる為。故に撃退よりは倒して討伐部位の確保が望ましい)

・可能ならば荒らしに来ているモンスターの規模も確認して欲しい。数が多い場合は応援を呼ぶ必要もあるかも知れない

・必要な物資がある場合、必要に応じて出す用意はある(その場合は応相談)



紙に書かれた委細を読み込むショウ(カオルが横から頭を突っ込んで読んでいる。少しこそばゆいんだが…)流石に30分程度じゃ余り細かいことは決められなかったようだが、まぁこんなもんだろうと納得する。


「倒してしまってもいいのだろう?」


と、カオルがどっかで聞いた台詞を口にしているがスルー。つーかイラスト書いてた時期とそれってかなり年代が離れてるんだが何処で調達してるんだか…俺の頭からか?


「じゃあ、畑に行くんだよな?」


「うん。場所はこっちね」


一行はシィナを先頭にして歩き出した。天気はやや雲があるものの概ね晴れということもあり視界は良好だ。唯、夜行性のモンスターの場合は見つけられないだろう。今日は日のある時間帯の監視からかな?…とは思ったが、取り敢えず畑に着いてから訊いてみるか…とショウは考える。



- 村長の管理する畑に到着 -


「畑はここら辺ね」


シィナは両腕を広げてみせた。そこには、下り坂から先に広がる広大な畑があったが…


「えっと…ここら辺、ですか?」


「えぇ、そうよ?」


見渡す限り、坂を下りた先には耕されている広大な農耕地が広がっていた。それこそ、「どこの北海道の畑だよ!?」と叫ばずにはいられない程の…。俺は大声で叫びたかったが、そこは我慢した。


「…これ、どう見ても3人じゃ監視は無理ですよね?」


視力が普通ならば、せいぜい1kmくらいしか見通せないだろう。エルフであるシィナならもう少し遠くまで見通せるか精霊魔法で何らかの方法があるかも知れない。が、正直ショウには今のままでは無理だと判断する。


「そうね…昼間なら兎も角、夜だと正直無理があるわね…」


(げ…まさか、昼夜ぶっ通しで監視するつもりなのか?…マジ勘弁してくれ)


と思いながら嫌そうな顔をしていると、


「あ~、若しかして徹夜するのか?…って思ってるでしょ?」


シィナが笑いながら突っ込んでくる。


「違うんですか?…っていうか、初っ端から飛ばすと途中で倒れると思うけど…」


と返す。


「大丈夫。私たちはあそこの小屋で待機していればいいの!」


指差す方向を見ると、数人が入れば一杯になりそうな小屋があった。どうやら休憩の為の物らしいが…


「取り敢えず行きましょう」


「あ、はい…」


いわれるがままに歩き出す。いきなり休憩にするのだろうか?…と思ったが、中に入って説明を受け、成程と納得するのだった。



━━━━━━━━━━━━━━━

魔法を用いた監視方法を行うと説明があった訳ですな。ヒントは精霊魔法。尤も、ショウも必要と思えば監視などに便利なスキルを取得する訳ですがどうなることやら?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る