18 その3

前回は6話のシィナさん視点を書いてみました(当然起きて見ている間のことだけなのですが、当日はちゃんとフルタイム意識があるのでそのまんま描かれているのは仕様です。ご了承ください)

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「おめでとう!…で、構わなければステータスを教えてくれない?…アドバイスできることもあるかと思うのだけど?」


大きな声で驚くことはしなかったけど、矢張やはりレベルアップはお祝い事だから祝うことは我慢できなかった。恐らくだけど初めてのレベルアップだろうし、何かアドバイスできることはないか?と思って訊いてみたんだけど…。


「えぇっ!?…こーゆーのって秘匿するものじゃ?」


との反応。敵対者や他のパーティーの冒険者ならともかく、身内にそれはないでしょ!…てな反応。


「冒険者にもなってない常識知らずにアドバイスするのに、基礎ステータスくらい見ないでどうアドバイスしろっていうの?」


つい、辛口な意見が出るのも仕方ないよね? ショウくんは渡した紙とペンですらすらとステータスボードの一部を書き写して見せてくれた。



性能諸元ステータス表

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名前:ショウ(男)

Lv: 2

HP:11/11

MP:13/13

頑強:11 筋力:10

精神:13 知識:15

器用:10 運 :21

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「こんな感じです」


「ふむふむ…どちらかというと魔法使い寄りのバランスと…」


ていうか何故、頬を赤く染めてそっぽを向く?


「Lv2か…まぁ、こんなものかな。SPはもう割り振っちゃったの?」


書いてないけどSPはもう割り振ったのかなと思い、訊いてみると…


「え?…えぇ、ちょっと体力と腕力に不安があったので、頑強と筋力に…」


とのこと。初めてにしてはアドバイスが不要な程に熟知してる模様。出身地の先達者に教えて貰ったのかしらね。体力・腕力に不安があれば、頑強と筋力にポイントを割り振るのは定番だし。この2点を補強して初めて冒険に不安無く行けると…やや筋力に不安はあるけど前衛じゃなければ問題は無いかな?


「そうね。冒険者は体力勝負な所もあるし、悪くない選択だと思うわ。魔法は…いえ、そこは聞かない方がいいかな。まだパーティを組むと決まった訳じゃないものね…」


内心はパーティに組み込む前提で考えてるけど本人に意思確認はしてないし…。う~ん、本人も錬金術で食っていきたいっていってたしなぁ…。エンバートが戻ってから相談ってことになるとは思うけど…とか考えながらショウくんをじっと見つめてたら、不意に視線が交差する…というか、いきなりだったので仰け反ることもできずにほぼゼロ距離で…


「ぶはっ!?…し、ししし、シィナさん、近い近い!!」


「ひゃっ、びっくりした!…って、いきなり顔上げないでよ。また考え込んでたからどうしたのかな?って覗き込もうとしたらこれだし…」


「あ、えーと、ごめんなさい。えっとですね…」


今後の方針やら何やらの相談を受けることになった。はぁ、びっくりしたわ…。



「うん、まぁいいんじゃない?」


取り敢えず、基礎体力が十分育つまでは初心者冒険者と同じ薬草採取依頼や、村内のお使いをこなしていくということにしたらしい。完全に安全ていう訳でhないけれど、四六時中見張っている訳にもいかないし。遠くに行かないと約束をして許可を出すことにした。…何故かびっくりしてるようだけど、変なこといったかな?


「で、これから冒険者ギルドに行って登録するんでしょ?」


「えぇ、まぁそうなる、かな?」


「何で疑問形?」


何を疑問に思ってるか判らないけど、決まったのなら善は急げ!…と思ったんだけど、腹の虫が鳴る音が響く。私も小さくだけど鳴っている…聞かれてないわよね?


「あははw…もうこんな時間か。じゃあお昼食べてから行こっか?」


「あ、はい…」


取り敢えず部屋を出る。そんなに冒険者密度が濃い訳じゃないけど、混まない内に受付に行けるならそれに越したことは無い。私とショウくんは宿の食堂に向かうことにした。



という訳でお昼を受け取りに行って部屋に戻り、食べ終わった頃…。


「じゃあ腹ごなしも済んだし、食器も片付けたし」


「はい。冒険者ギルド…の出張所に行こう?」


「…何でそこで疑問形なの?」


「さぁ?」


さっきから疑問形の台詞が続くショウくん。自信が無いのかな?…まぁ、何事も最初は初めてなんだし自信が無いのも無理はないかと思う。といっても、いつまでもうじうじしてても始まらないから彼の手を引いて立ち上がる。


「さ、ちゃちゃっと行って登録して冒険に行きましょう!」


まぁ~…最初は薬草採取の依頼を受けるんでしょうけどね?(苦笑)



「さて着いた。道順は覚えた?」


私はもう何年も行き来してる定宿から冒険者ギルド出張所までの道のりだけど、ショウくんはこれで2回目くらいだろう。念のため訊いてみると、


「はい。有難う御座いますシィナさん」


と、照れた様子で返事が返って来る。ん~、可愛いわぁ♪


「そ、そう?…あなた頭いいのね?…一発で道順を覚えるとか…スカウトの素質があるんじゃない?」


それだけで斥候の素質があるってのも変だけど、褒めて伸ばす方針だからね、うちは!…って、エンバートが聞いたら「いつ決まったんだ?それ」とかいうんだろうけど…


「えっと、特に何かの職業に就く予定は無いので…。まぁ、これと思ったら就くかも知れないけど」


なぁんだ、残念。まぁ、最初から道を狭めても良くないか。とりあえず、「うんうん、そうだね」と曖昧に返事を返しておく。


「じゃあ、登録してきますね?」


ショウくんは出張所の建物の中に入って行く。私は…どうしようか。余り広い建物でもないし、中に入らないで外で待ってようか…う~ん…とかやってたらもう姿は見えない。やっぱり何かあったらフォローはした方がいいよね!…ということで、私も中に入ることに!



「いらっしゃいませ。冒険者ギルド「ハイミト村」出張所へようこそ!」


「えっと…」


「何の御用でしょうか?」


「あ、えっと…」


矢張やはり、慣れないやり取りで困ってるみたいですね!


「この子の冒険者登録をお願いします」


取り敢えずショウくんの頭をぽんぽんと撫でながら割り込む。若干涙目になったショウくんに対して、思わずドヤ顔になっちゃったのは大人気なかったかな?…


「シィナさま!?…お身体は大丈夫なんですか?」


あ…そういえば昨日はエンバートの馬鹿にお腹殴られて心配させたままだったっけ…


「だ、大丈夫よ?…私の精霊もそういってたし?」


とか何とかいって誤魔化す。ギルド出張所医務室の先生の施した回復魔法だけで何とか回復して腹が疼いてただけになってたしねぇ…


(ん?ショウくん固まってるけどどうしたんだろ?)


ふと、視線を下げると彼は動きを止めて空中を凝視してたようだ。


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7~8話のシィナさん視点でした。今回は2話分ですが台詞も補完文章も少なめだったので、それ程の文量にはならなかった模様。

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