09 冒険者登録しよう! その2
思わずシィナさんのステータスを知り得てしまったショウ。まるで、異性の秘密を暴いた気がして顔を羞恥で赤く染めるのだった…(まて!そこまで
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「そうですか…はい、わかりました。それで…そちらの方の冒険者登録、ですか?」
受付嬢が俺に視線だけを向けてシィナさんに問いかける。心なしか疑惑の目を向けられている気がするのだが、気のせいだろうか?
(
恐らくは…シィナさんが人族で言えば貴族に当たるだろう氏族だから、何処の馬の骨かわからん俺が近付いているから警戒されているんだろう。昨日はあのドタバタで視界にも入らなかったんだろうな…そうすると、ガイルって人も貴族とかだったんだろうか?
「じゃあ君、こっちへ来て。読み書きは出来るかしら?」
不意に呼ばれて焦る俺。取り敢えず誘われるままにカウンターへ歩み寄り、差し出された用紙とペンを受け取る。
「あ、大丈夫です」
「…そう。では、間違いないようにお願いね?」
読めるのであれば問題ないけど書き間違いはノーセンキュウですよ?…と言いたげに受付嬢は口を閉ざす。多分、荒事に適した冒険者たちで文字が書けるのは珍しいけど、書き間違いが多いんだろうな…と思いつつ、ペンにインクを付けて書き始める…
【冒険者登録願】
---------------
氏 名:ショウ
住所・出身:
職 業:
(…ううむ、名前しか書ける所が無いな…。前の地球の住所なんて書いても意味無いし、多分東京都とか書いてもこっちにはなさそうだしなぁ…。高校生とか書いても俺の体格で成人したばかりと判断されるくらいだから、学校なんて無さそうだし…あっても貴族階級の子供たちしか通ってなさそうだし…)
どう見ても平民然とした俺の
「これしか書ける所が無かったんですが、構いませんか?」
と尋ねると、
「大丈夫ですよ。逆に住所不定なのに適当に書かれたり、就いてもない職業を書かれて調査の手間を掛けられるよりは余程マシですし?」
と、微妙にこめかみをヒクつかせながら答えてくれた。きっと、過去に色々あったんだろうなと思ったが深く突っ込まないことにした。後ろからシィナさんが「今は私たちの宿に居候させてます」と追加説明した瞬間、受付嬢が一瞬凍り付いて左腕が背中に伸びて何かしてたけど…。その背後で誰かが動いてたけどスルーした。世の中には気付かない方が幸せなことって多いもんだ…(多分、裏を取る為に動いたギルド職員の人たちだろうなぁ…お手数掛けてすいません)
「では、冒険者登録に当たって適性を調べる試験をします。こちらにどうぞ?」
どうやら冒険者登録の山場を迎えたようだ。俺はゴクリとつばを飲み込みながら、受付嬢の差し出した手の先を見た。そこには案内役であろうギルド職員が待機していたので歩き出す。緊張し過ぎで転ばないように、慎重に…
- 冒険者適性試験・その1 -
「では、まずはこの水晶球を触って貰おう」
案内された先。数人くらいしか入れないような小部屋には机と椅子。そして机の上には水晶球が置かれていた。無色透明で占い師が扱うそれよりは大きく重そうだった。転がらないように台座に固定されている。
「えと…座った方がいいですかね?」
水晶球の前には椅子が置いてあるので無論座った方がいいと思ったが、念の為聞いてみる。
「どちらでも構いませんよ。中には立ったままの方が自然体になれるって人も居ますから」
どちらでもいいそうだ。では、寝転んだ方がいいって人が居たらどうするんだろう?…とも思わなくもないが、今そんなことを聞いても意味はないのでスルーしておこう。
「では…」
そう言いながら深呼吸を数回した後、スタンダードに座って水晶球を見詰める。
「あ…基本的なことを聞くようで何ですが、これって何の試験でしょうか?」
かくっとずっこけることもなく、ギルド職員は
「あぁ、そう言えば説明してませんでしたね。これは魔力の量。魔力の質。得意・不得意な属性などを調べる為の水晶球です」
「へぇ…色々調べられるんですね?」
と思いながら水晶球を見ると、
【鑑定の水晶球】
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・表向きは魔力量・質・属性を調査する水晶球。真の機能として、触れた者の本質を調べることにある
・調査対象が鑑定能力を上回った場合、わかる範囲でしか報告ができない弱点もある。その場合、能力回復の為に補充する魔力は想像を絶する程必要となる
・残存魔力量:81/100
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…と、鑑定結果が表示された。
(またか…別に鑑定したくて発動してないのに…まぁいいけど…って、真の機能って…これ、犯罪者なんかが冒険者を悪用させないようにって機能だよな…)
たかが出張所に用心深いな…とは思ったが、別種族ではあるが貴族階級のエルフがいるせいだろうな…と思い、まぁいいやとスルーして手を触れることにした。
「…ふむ。魔力量は普通。質も普通。得意・不得意属性も無しですね。きわめて平凡と…。逆に珍しいですね。得意属性も不得意属性も無いなんて」
あとで聞いた話になるが得意属性は無い事は別に珍しくはないのだが、大抵はどこか不得意な属性があるのが普通らしい。俺のような場合、どんな魔法だろうが満遍なく発動・効率も普通になるからどんな所に行っても重宝されるだろうとのことだ。尚、隠れた機能の調査結果もわかったのだが「特に前科は無し」とのこと。とはいえ、この世界に現れたのが昨日のことなので有る筈も無い。せいぜい、ゴブリン殺しの前科が付いたくらいではないだろうか?
(ゴブリンを殺して罪に問われるのは彼らの世界で、だろうなぁ…多分)
そんな益体もつかないことを考えてたら、ギルド職員の人から次の説明が始まっていた。
「じゃ、次は体力測定と武器を用いた模擬戦になります。大丈夫、武器と言っても刃を潰した練習用の武器ですし、今まで武器に触れたことが無くても何かしらの武器が自分に合った物かわかるようになるでしょうから」
…と、説明を聞きながらギルド出張所の小屋を出た。余り広い建物じゃないので短い廊下を渡ればすぐに裏庭に到達した。尚、シィナさんは無言で後を付いてきている。終始無言なのが気になったが、背後から感じられる雰囲気には悪い感じは無いので大丈夫だろう。
「では、この中から自分に合ってると思う物を選んでください。わからない場合は、小型の盾と剣をお勧めします。万人向けでもありますしね」
と説明してるのは、最初から案内をしているギルド職員さん。ちなみにこちらも若い女性で俺より少し背が高いってくらい。シィナさんよりは低いかな?
(剣と盾か…なら、これかな?)
練習用の武具が入っている幾つかの木箱から、俺は持って見てしっくりくる両刃の剣。そして小型の丸盾を選んだ。どちらも木製で刃も元々付いてない。鉄製の物もあったが、まずは木製の軽い奴で様子を見てみよう。
「決まりましたか?」
「はい。これで試してみようかなと…」
手に取った剣と盾を見せる。
「アドバイス通り、剣と盾を選んでくれたのね?」
「えぇ、武器とか触れたこと無いですし…。まずは様子見で」
うんうんと頷いてるギルド職員。ならばと同じ木箱を漁り、先端だけが木製の金属製刺突剣だけを取り出す。流石に全部木製だと折れてしまうからだろう。
(先端だけ木だけど、あれって直撃したら突き刺さりそうだよな…心臓付近の胸だったら即死しないか?…あれ………)
思わず想像してしまい、ぞぉ~~~っとなるが時既に遅し。練習場の中央付近まで歩いて行ったギルド職員…もとい、ギルドのお姉さんは「早く来なさ~い!」と陽気に叫んでいる。
「えっと…」
彼女に指差して、横に居たシィナさんにもの言いたげに視線を向けると、
「…」
軽く頭を横に振り、「観念して行ってきなさい」と、びしっ!と指を差し示すのだった。
「…はい」
ガクッとしながらも、諦めの表情をしながら相対する位置までゆっくりと歩く。せめて剣術とか生えないかなと期待しながら…
「じゃ、ルールを説明するわね?」
(そう言えば、先に体力測定するって話しでしたよね?…体力測定は何処行ったんだろう?)
そんなことを思いつつもルールを聞く俺だった。
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スルー回? いえ、スルー技術を鍛える回です(まて
ショウ「そう言えば防具は何故用意されてないんだろ…せめて上半身や心臓をカバーする奴とか…」
シィナ&職員「あ…」
※忘れてたらしい
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