05 初めての依頼(但し、冒険者ギルドは通してない)

遭遇戦を終え、現地民との遭遇をする(まだ大雑把な前書きだ)

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- 戦い終わって頼まれたこと -


「実はだな…」


話すと…書いても長いが。省略すると、戦死した同僚を連れて帰りたいが自分1人では彼女シィナと遺品の一部を持ち帰るので精一杯だ。だが、俺という労働力(予定)が現れたことにより、できるだけ持ち帰りたいとのこと。いやいや、普通の高校生にそんなバカみたいな力を期待されても困るんだが…。せめて、リヤカー…いや、この世界じゃ荷車がせいぜいか?…があれば死体ごと持って帰れますけどねぇ…。


「…おい?」


「はい?」(アクセントは前)


「あそこの…あの荷車、お前のか?」


「はい?」(アクセントは後ろ)


毛むくじゃらの人物…獣人エンバートに指差された方を見る。そこには草原からやや離れた場所に林があったのだが、ぽっかりと開けた空間に…


「リヤカー…ではない、か。手で引くタイプの木製の荷車か…って、えぇ~!?」


(ここら辺って結構木が立ち並んでた林だったよな?…えぇ~…)


草原の横手に林があったので覚えていた。戦闘音が聞こえて足音を抑えながら歩いた時に、一応周囲を見回してたからな。だが、その時にはこんなぽっかりと空間が空いてはいなかった筈…。だが、そんな考察をしている場合じゃないと頭を振って追い出す。


「あ~…これでその…死んじゃった人と荷物を運べるよな?」


「あ、あぁ…貸してくれるのか?」


「えと…うん。使って欲しい…」


「有難い!…この礼は後程絶対に!」


こうして…有耶無耶の内に荷車を手に入れたショウは、エンバートに使ってくれと押し付けると、シィナというエルフの護衛を頼まれて待つことになったのだった。


「いや、護ってくれといわれてもな…」


確かにさっきはゴブリン?と戦って何とか勝てた。が、今後も勝てるとは限らない…と口の中でごにょごにょいってる内にエンバートは姿を消してしまい、いわれた通りに留守を護る羽目に遭うショウ。彼は溜息を吐いてから美貌のエルフシィナの傍できょろきょろするしかなかった…



- 地球近傍・某所4 -


「こりゃあ…」


「ん? どうしたの?」


男性管理神が監視鏡を覗きながら呟き、その呟きを聞いた女性管理神が何だろうと質問する。


「あの少年が行使していたスキルじゃが…錬金術の類かと思っていたが」


「違うかしら? 私にはそう見えましたが…」


男性管理神は視線を管理鏡から微動だにせずに淡々と話し、女性管理神は観察し判断した結果を素直に伝える。


「今はまだ未熟だから等価交換以下の効率じゃが…熟練度が上がれば全く違うモノになるじゃろうな…」


「…何になるのでしょうか?」


勿体付けてないで早く話して下さい…と、ジト目で見詰めていると、


「創造神に等しいスキルとなるじゃろうな。行使するスキルも、それに相応しいモノとなるじゃろう…」


「え…それって…」


「あくまで、このまま成長して行ったら、じゃがな?」


ごくりと唾を飲み込む音だけが響く。視線を監視鏡に戻した女性管理神は、その中に映る少年…ショウを凝視するのだった。



- 再びショウが待つ草原へ… -


「おう、戻ったぞ!」


ガタゴトと騒がしく荷車を引いてエンバートが戻って来た。荷台の中の死体と思われる膨らみは…恐らく野営に使うだろう、大きめの布で覆い被されていた。


「それが…」


「あぁ…戦死した仲間の骸だ。幸いといっちゃなんだが夏じゃなくて良かった」


「あ~…夏だと非常に臭いますもんね…」


獣人である彼なら猶更だろう。獣は人間の何倍以上も鼻が利く。悪臭や腐臭には滅法弱い…獣人の彼もまた、嗅覚が人間より優れている可能性がある以上は腐臭に耐えられない可能性もある。エンバートは未だ眠り続けているシィナ眠り姫に近寄り、そっと抱き上げて荷車の空いている所へと静かに横たわらせた。


(エルフの美人をお姫様抱っこか…。美女と野獣ってんなら、絵になるかな?…)


そんなことを横目でチラ見しつつ思い浮かべながら、役に立ってるかどうか不明ながら周囲の警戒を続ける。


「あ、すまん。シィナの頭の下に、これ敷いてくれるか?」


「あ、はい」


荷車の取っ手に下から回り込んだ彼が、忘れていたとばかりに背中の袋から取り出し手渡してくる。それは清潔な布を巻いた物で枕の代わりにしてくれということだろう。ショウは軽く頷くと荷台に乗り込み、横たわっている彼女の頭をそっと持ち上げてその下に枕代わりに丸めた布を敷く。


「悪いな。じゃあ俺がこいつを引いて行くから、後ろの警戒頼むぜ?」


荷台から降りた俺が無言で頷くと、


「いつもならシィナの奴がやってる仕事なのによぉ~…」


と愚痴りつつ静かに荷車を引き始める。移動するペースはショウの歩調に合わせてくれたのか然程変わらなかった為、未舗装の山道ではあるが何とか付いて行けた。


(後方警戒つったって…そんなスキル、高校生に求められてもなぁ…)


だが、怪物モンスターと遭遇することなく、数時間を掛けて最寄の村まで無事に到達することができたのだった。ショウは慣れない後方警戒をしていた為、村に辿り着いた時点で倒れそうになっていた…



- 拠点村に到着 -


「悪いな。待たせちまって」


「いえ…」


ショウたち3人は村に入る時、入口で呼び止められて何事かと職質を受けた。エンバートが全て対応をしてくれ、ショウは入村の手数料などを取られることもなく村の中へと入れたのだった。


村には冒険者ギルドの出張所があり、そこで得られた素材の買取や討伐の報酬を得たりできるのだとか…。今回はガイルという仲間パーティメンバーの戦死の報告も加えて行われた。



「これからどうする?」


「…」


まぁ、訊かれるよな…天涯孤独と思われてるし、金も無いし…。いや、俺の倒したゴブリンと倒してないけどオークの討伐報酬を分けてくれたから、無一文って訳じゃないが…


「行く宛が無いなら俺らと一緒に来るか?」


「えっと…冒険者になれってこと?」


「有体にいってしまえば、そうなるな」


いやいやいや、唯の高校生にあんな荒事無理っすよ…といいたいのをぐっと堪え、


「うーん…俺、そんなに荒事に向かないんですよね…。この細腕見ればわかると思うけど」


ふにゃっとした二の腕は、どう見ても腕っぷしが強そうには見えない。高校生らしく多少は筋肉は付いているが、普段から重い物を持たない都会っ子じゃ剣の素振りすらしたことがないから、な。


(学校で柔道の授業があったから受け身くらいはできるけど…これなら剣道を習ってた方が良かったかな?)


周囲の冒険者が腰に吊るしている剣などは、竹刀とはまた作りが違うせいで扱い方に差があるかも知れない。エンバートに至っては長槍だから手本にすらならない…


「う~ん…荒事をしなくても生活できる金が稼げるなら、冒険者になってもいいけど…」


渋る俺を見ていたエンバートは「ふむ…」と呟いて何やら考え込んでいた。ちなみにシィナはギルドの医務室で寝かされている、らしい。「腹を軽く殴って気絶させた」といったら医務室付きの医師にエンバートが怒鳴られていた…。


(内蔵破裂しなくて良かったとか何とか…獣人の腕力って恐ろしい…)


荷車は出張所の出入り口に置くと邪魔になると、遺体と遺品を下ろしに裏へと回されたようだ。後で回収してくれと頼まれたけどいつ取りに行けばいいんだろうか?…などと考え込んでいると、


「まぁ、すぐに決めるのも無理だろう。取り敢えず、俺らの泊っている宿屋に来い。ガイルのベッドが空いてるから、暫く貸してやる」


…とまぁ、何で見ず知らずの俺にそこまで世話を焼いてくれるのか不明だが暫くの間、世話になることに決まったらしい。ショウの意思がスルーされているが、宿無しの身分では有難いことだろう。


(この世界について色々知っておく必要があるし…冒険者ギルドに登録しないと書物を借りて読めないってのはお約束だろうしな…って、ここは出張所だからそこまで読む物は無いかもな…)


「何から何まですいません。どれくらいの期間かはわかりませんが…宜しくお願いします」


そういいながら頭を下げると、


「なぁに、いいってことよ。じゃ、ついてきな?」


…そんな訳で、未だに意識を取り戻さないシィナさんを出張所の医務室に置いてきぼりで常宿に帰るエンバートの後について行くのだが…1時間くらいしてから物凄い勢いで帰って来たシィナさんが、「えんばぁぁぁとぉぉぉ!!」と物凄い形相で叫びながら駆け寄り、振り返ったエンバートの顎をアッパーカットでノックアウトしていた。この世界の女性って怖い…ガクブル


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エンバートたちのパーティに暫く世話になることに。冒険者になる必要もあるかも知れないということで、冒険者登録もするだろうと思う。後、綺麗で美人で儚そうでも、冒険者の女性は怖いと学習した…ガクブル


【本日の錬成品】

・10数本の木から荷車を作成。

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