04 モンスターとの遭遇戦から現地民との遭遇

世界が転生して直後に主人公が戦闘に巻き込まれる(大雑把過ぎる)

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- 初めてのスキル発動(但し、使った感無し) -


(武器も無しに戦闘とかやってられっか!)


俺は恐怖に震える腰と足を叱咤して何とか飛んで来た斧まで到達し両手で掴む。


(くっ…重い。血で汚れててぬるぬるするし…これ、振ったらすっぽ抜けそうだな…)


そうこうしてる内に見た目は緑色の小汚い恰好をした小鬼?…恐らくはゴブリンって奴だろう。もう片方の毛むくじゃらの顔が犬顔だ…こちらはコボルドなんじゃないかな?…が歩み寄ってくる。幸い、それ以外は居ないようだが戦闘経験のない一般的な高校生にどうこうできる訳もない。寧ろ、すっぽ抜けそうな血濡れの斧を獲物にしても勝てる気がしない…


(くそっ…せめて濡れてなくて使い慣れた刃物…出刃包丁とかだったらまだ戦いようがあるってのに…)


そんな益体も無いことを考えた途端、手にしている斧が僅かに光り…気付いたら元の世界の出刃包丁と同じくらいの刃物に変じていたのだ。


「は?…あれ?…斧…だったのに、包丁になってる?…」


声を出して驚いていると、にじり寄って来た緑色の小鬼…ゴブリンが手にした粗末なこん棒を振り上げながら駆け寄って来た!


「うわっ!?」


がんっ!


〈ギィ~!?〉


からん…


辛うじて避けるショウ。空振ったこん棒は地面を強打し、痺れたのかゴブリンは唸り声をあげてこん棒を取り落とした。


「お、チャンス!?」


ショウは包丁を握り直してゴブリンへと振るう。が、振りが甘かったせいか、肩口を浅く切り裂いたに留まった。


〈グギャッ!〉


ゴブリンは悲鳴を上げて肩を抑えながら逃げ出していく。入れ替わりに仇を取ろうと思ったのかは不明だが、別のゴブリンが殴ろうと駆け寄って来た。


「うっ!?…不味い」


包丁を振り抜いた状態では避けることも難しいだろう。あわや、こん棒が直撃する!…と思ったが、


ガンッ…


〈ギィ…〉


からん…


まるで硬い壁でも殴ったような音がしてこん棒が弾かれる。殴ったゴブリンは地面を強打したゴブリンと同様に手が痺れたのか、呻きながらこん棒を取り落としていた。


「えっと…またまたチャンス?」


今度は落ち着きながら包丁を胸目指して突き入れ、そしてぐりっ!と抉る。


〈グギャァアッ!〉


断末魔を上げ、そのままコテリと脱力を上げて倒れるゴブリン。次はどいつだ!?…と、なるべく目に力を入れて睨むと怯んだゴブリンがこん棒を投げ捨てて逃走し、きょろきょろと俺とゴブリンを見回していたコボルドたちも遅れて逃げ出した。


「ふぅ…助かった、のか?」


へなへなと腰が抜けてへたり込むショウ。僅かな時間を空けて斧が飛んで来た方から毛むくじゃらの男?が女性を抱えて歩いてきたのはその時だった。


「ひぃっ!?…また増援!?」


予告なしに現れた毛むくじゃらの男?の登場に俺は情けない声を上げてしまい、腰が抜けて動けなかった…。いや、情けないとかいわれても困る…これでも一杯一杯だった訳だし…



- ショウ、冒険者たちと遭遇する -


「おお、すまないな。驚かせてしまったようだ…大丈夫か?」


毛むくじゃらの男?は意外にも好意的な態度で接して来た。彼は女性をゆっくりと地面に寝かせると俺の手を取って起こし上げてくれる。包丁は驚いた時に地面へと落としてしまったので今は無手のままだ。


「俺はエンバートという。彼女はシィナだ。もう1人居たんだが…さっきの戦闘でおっ死んじまってな…君の名前は?」


どうやら斧を弾き飛ばしたのは、このエンバートって獣人の男?だったらしい。物凄い力があるようだ。


「えっと、ショウっていいます」


取り敢えず名前だけいうだけにした。初対面で個人情報を余りべらべらと話したくないってのもあったが、獣人なんて…元の世界じゃ存在しなかったからな。どうやら異世界ってのは本当のようだ。寝かされてるシィナって人も、耳が尖って長くて…まるでエルフのような容貌だし。


「そうか、ショウというのだな。…ショウはここで何していたんだ? 見た所、こっちでも戦闘があったようだから戦っていたというのはわかるんだが…」


そういいながら落ちていた包丁を手に取るエンバート。しげしげと見ているが、料理用の刃物で戦闘を?…とか思っているのだろう。


「ほい、獲物を落としたままにすると余り良くないぞ?」


腰にぶら下げていた荒い布で刃を拭いて渡してくる。いや、そのまま渡されても鞘も何もないんだよな…。


(え?…これ、鞘?…包丁用の?)


手渡された包丁にぴったりの鞘が、受け取った右手とは逆手。左手にいつの間にか収まっていた。「まさか?」と思って倒したゴブリンの方を見ると、落ちていたこん棒が2つとも消失していて…。


(えっと…何これ…ひょっとして、転移して会得したスキルって奴なのか?)


等価交換かどうかわからないが、素材を任意のアイテムに作り替える…まるで錬金術みたいなスキルに見えるが…。斧からはかなり小さいが出刃包丁が。こん棒×2からは包丁の鞘が得られたという訳だ。材質は包丁の方は小さくなった分、品質がいい金属に作り替えられているように見える。木製のこん棒から何故、革製の鞘ができたのは不明だが…。ある程度は材質も変更が効くのだろうということで無理やり納得することにした。


「あ、ありがとうございます」


俺は包丁を受け取ると鞘に納め、取り敢えずベルトに引っ掛けておいた。位置的には腰の方が収まりがいいが…見えないと不安なので左腰に吊るすことにした。


「えっと…生家に戻ってきたら…家が無くなっちゃってたんでどうしようか悩んでいたんですよ…あはは………」


うん、取り敢えず嘘はいってないな。世界そのものはまるっきり変わってるみたいだけど、な。戻って来たって下りは嘘だけど、本当のことをいっても気狂いと思われるだけだろうし…。


「そうか…。家族は居ないのか?」


おや、信じてくれたようだ。このおっさん?お兄さん? この世界のモラルがどの程度なのかわからないが、そんなに簡単に信じて生きて行けるんだろうか?


「えっと、生家がないことから家族や親戚は恐らく…。生きていても、何処に行ったのかわかりませんし…」


なるべく同情を引くように落ち込んで見せる。上手く行けば、人の集まっている村か町まで案内してくれるかも知れないという打算込みの演技だ。1人戦死しているという話しもあったし、ひょっとしたら荷物を運ぶのを手伝ってくれという話しも出るかも知れない。


「ふむ…そうだ。ひとつ手伝って欲しいことがあるんだがいいだろうか?」


よっしゃ、キタ――(゚∀゚)――!…と、喜びを顔に出さずに苦労しながらエンバートの話しを聞くことにした。でも、俺の体力を考えると、荷運びの依頼だったら困るかもなぁ…体力に自信なし、だし…


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多分、死体から持てるだけの物を剥いで荷物運び(何を運ぶのがいいのか判断できない)、シィナを担いで運ぶ(体重は軽いがショウの筋力的にそんなに長距離は無理)、シィナを起こしてから付き添うのどれかでしょう(どれも外れという罠もありw)


【本日の錬成品】

・オーク斧(大)から標準サイズの出刃包丁を一振り作成

・ゴブリンこん棒×2から出刃包丁にぴったりな鞘1つを作成

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