ねじ巻く貴方と縦の糸

僕のような人間はになれない。

はぁ…と溜め息をつく。

目の前の惨状に悪態をつきたいが…仕方がない、声を荒らげて叫ぶなんてガキの様な真似はしない。

覚醒のときは近い。

まだ数刻あるようだが、焦ってドジ踏むよりマシ。

すぐにでも、だなんて馬鹿のするようなことなんだ

、俺は違うと自分に言い聞かせる。

そうやって今まで生きてきたんだろう?、と

しかし現実は残酷だな………同仕様もなく望んだって無理なものは無理なのだ。

気合だとか努力だとか…それはを持つものだけが言える戯言に過ぎない。

つまるところ"エゴ"

くだらない、あぁ、くだらない


この前だってそう、僕はいつもハズレくじを引かされて痛い目を見るんだ。

はぁ…と溜め息ばかり。

夢ならば早く覚めてくれ。

だから…何度も言っているだろう!

とにかく生き続けるしかないのだと。






部屋は静かだった。

屋内に外の雨の音は届かず、忌々しい他人の協奏曲で僕の人生が汚されることはない。

一度だって綺麗なままで要られたことはない。

人である、というだけで僕は汚れているんだ。

呟いた僕の陳腐なは、大根役者のお芝居の如く僕を殺そうとしてくる…もうどうだっていいんだ

、誰も僕を許してくれないんだから!


この世に救いはない、幼い頃から知らされていたなんて言えば聞こえはいいけど、結局はうわ言。

お伽噺の様で……それでいてこれはなんて美しい与太話。

じゃあ、またね…。と君は言った、私はこのままじゃ駄目なんだ。とも

だから…どうしょうもない事、過去現在未来全て含めた僕の罪。

だからこそ謝らなきゃ…君に…


もし、また君に会えるのなら…信じているから…きっと会えると信じているから!

ともに歩んだ道を踏みしめる。

素直な君の横顔を思い出す。

晴れた青空に顔を向けて笑う、それが罪であると僕らはまだ知らないから。

しがらみを吐き捨ててただ走り出す。

いま、この時の為に。

作り物の体を脱ぎ捨てて、絶え間なく歩む。

品揃えの悪いあの場所に別れを告げる為に、僕と君を繋ぎ止めるために!

作るんだ、僕だけの世界を…君と一緒に過ごす、僕らの世界を!

なんでもない。君はそう言って微笑んだ。

けれどもそれは悲しい笑顔、もう一度、心から笑えればそれでいいんだ、二人が共に歩むことができればそれでいいんだ。




まぁ、そんなこと無理だと知っているんだけど…またそれで笑ってくれるんだ。

失うと知っていても笑顔を見せてくれるんだ!

敗けだと分かっていても笑ってくれるんだ!

だから…君が嫌いだ…










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