第10話 B級冒険者になっちゃった
「さっすがアタシのアオね。本当にB級に認められちゃうなんてやるじゃない!」
「うんうん。あーしも推薦人として鼻が高いよ!」
認定戦を終え、二人の元に戻って来た僕をリルリアとシルハはそう賞賛した。
さっき支部長に聞いた冒険者のランクは大体こんな感じらしいので、確かにいきなりB級として認められるというのはとても凄い事なのだろう。
R
A級(0.01%) 天才の集まり
B級(2.99%) 一般人の限界
C級(16%) ベテランand期待の若手
D級(42%) 一般人
E級(31%) ある程度仕事は出来る
F級(5%) 新米
G級(3%) 見習い
てかリルリア……。
さっきまで給料給料うるさかったやつのセリフとは思えないよ。
そして僕はリルリアのものではない。
「もうお金を受け取ってさっさと帰ろうよ。そしてそのお金で今日の宿を探そう」
「ドラゴンのウロコよ? きっと百万ゴールドは下らないわ」
ゴールドは大体円と同じくらいの価値。
だからこの場合は百万円以上が僕達の懐に入って来るという事だ。
やったね!
訳分かんない戦いに参加した甲斐があったよ!
「うぅ、これでアタシもお母様のブローチを取り返せるわ」
「……僕はあの国に一緒に戻ってあげないよ?」
「はぁ!? なんでよ! アオがいなきゃ誰がアタシの身を守ってくれるって言うの!?」
「いや自分で守りなよ……」
せっかくロージまで来たのだ。あんないつ衛兵に捕まるとも知れない場所に戻るのなんてごめんだね。
何が悲しくて、自分が指名手配されているかもしれない国へわざわざ一週間も掛けて戻らねばならないのか。
それにリルリアは魔法が使えるんだ。
いくら不運体質があるからといっても、自身に降りかかる火の粉くらいは自分で払えるだろう。
「一体誰のせいであのブローチを手放す羽目になったと思ってんのよ!」
「いや僕だけのせいでは無くない? リルリアだってお金持ってなかったし……」
そんなやり取りをする僕達二人を見て、シルハはコホンと咳払い。
「そんじゃ、あーしはお金も受け取ったし一先ず宿に帰らせてもらうね? ドラゴンの里……もしかしたら、ほんの小さな可能性だけど、一緒に行くかもしれないからその時はよろしく」
シルハはそう言って少し顔を赤らめながら、冒険者協会から出て行った。
ドラゴンの里の事、シルハに教えたの失敗だったかな?
僕はドラゴンに言われた通り、子を為す気があるのなら里まで僕達と一緒に来いと伝えてしまった。
だがそもそも僕は里に行く気などサラサラ無いのだ。
こうして里へ行くキーアイテム、ドラゴンのウロコも売却してしまった。
もしシルハが里に行きたいって言ったらどうしよう?
ていうかシルハ、ドラゴンと子を為すのにちょっと乗り気じゃなかった!?
もしかしたらとか予防線を張っていたが、あの赤面した様子ならもう既に覚悟完了してしまっている可能性すらある。
うーむ、ドラゴンと子作りか。
異世界人の考えることはぶっ飛んでるな……。
「お、いたいた! アオ! お前金がないんだろ? 良い依頼があるんだが引き受けないか?」
シルハが消えて行った協会入り口をずっと眺めていたら、支部長が僕を見つけるなり声を掛けて来た。
「いや、ウロコのお金があればしばらくは生きていけるし、依頼はいいかな」
僕の目標は冒険者として名を挙げる事では断じてない。
不労所得を得ながら、ニートするのが僕の人生の最終到達点。
その目的を達するには、こんな所でせっせと働いている暇などないのだ。
「そう言うなって! お前ら遠くから来たんだろ? この依頼を達成したら、ちょっと古いが激安の物件を紹介してやるよ。ロージを拠点として活動するなら、家を持っといて損はないからな」
なに? それは一考の余地あり。
確かに僕もずっと宿暮らしはお金が勿体ないなって思ってた。
それに持ち家ともなれば、夢のニート生活に一歩近づく。
ちょうど百万という大金が入って来るタイミングだし、ここで一つ大きな買い物をするのも悪くない。
「え? ちょ、もしかしてその家買おうとか思ってるんじゃないでしょうね? やめてよ? まだブローチを取り返してないんだから!」
リルリアも、僕と一緒に行動して大分時間が経つから、僕の考えている事は大分分かってきたようだ。
僕がマイホームの購入に凄く前向きでいる事を表情からすぐに察する。
「でもマイホーム、欲しくない?」
「そ、そりゃ欲しいけど……。でもアタシはお母様のブローチの方が――」
「ずっと宿暮らしも大変だよ? お金も掛かるし気も使う。思い切って買っちゃおうよ。なぁに、ブローチならまだ猶予は残されている。またお金を貯めればいいよ」
「うーーん。で、でも……」
これだけ言ってもまだ足りないか。
仕方ない。この手は使いたくなかったのだが――
「マイホーム購入に賛成してくれたら、お金が入り次第すぐに給料を支払おうじゃないか」
「乗ったわ!!」
ガシッと笑顔で握手を交わす僕とリルリア。
まるで首脳会談を交わした後の記念撮影みたいだ。
そんな僕達の様子をじっと見つめていた支部長はうんうんと頷きながら言う。
「よし、話はまとまったみたいだな。それじゃ、依頼の詳細を伝えよう」
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