第2話 歴代ダメンズAまだまだ青い

付き合い当時は、こいつが一番最悪な人だったと思っていた。

だから、男運の悪い部分は、全部この人と付き合うことで厄落としになるんだとしたら我慢して別れるわけにはいかない。

耐えなきゃ。

耐えたらきっと未来は、すごい白馬の王子様との巡り合いがあるかも!

そういう考えを隠しながらも、傍にいる男性Aを愛そうと頑張っていた。

好きという感情で頭がいっぱいになれば良かった。

A男は、優しくて穏やかな性格だけどダメンズ。

男であるくせに、平気で年下の女に甘えようとする。

たまになら我慢できる。

そうじゃないから、こっちは苦痛なんだ。

割り勘とかダサすぎる。

優柔不断なくせに、あとから人が決めたことに口出しする。

何よりだるくなるのは、泣き虫。

「別れたい、ごめんね」「嫌だよ、悪いところは直すから別れたくない」

その繰り返しが、5年のうちに、段々と言っても別れないという、根拠のない自信をA男に植え付けてしまった。

あたしの捨てきれない性格がダメだった。

変えればいい、こんなダメンズでもあたしの力で中身を変えよう!なんて無謀なことに意識したからダメだった。

とにかく一人で行動するのが嫌いだったA男は、時間さえあれば、平気であたしの職場に覗きにくる。

やめて。やめてよ!

!って何度声に出したかったか。

まだ、iPhoneが世の中に普及する前、メールが主流だった。

仕事の休憩時間に溜まった受信ボックスを開けると、いつも驚かせられる。

相手が誰かを確認しなくとも、異常な数のメールを送り続ける。

とてもかわいい、とか、愛してる、次会えるのがすごく待ちどおしい。

などなど、相思相愛なカップルなら普通なのか、愛がタップリずらずら文章。

初めは、嬉しいと感じていたのに、今は煩わしいしか感じない。

昔は、出会い系雑誌などコンビニで買えた、出会いなんて山ほど機会が溢れていた。

そんな時期に出会ったからこそ、ハズレが無いわけがない。

顔をお互いに照会せずにいいい、会った。ただ、リスクは考えていたものの、どこか白馬の王子を夢見た自分が判断力鈍っていたことを自覚せず、幕が開けた。

この男ダメンズAは、気品溢れる言葉で母性をくすぐりながら自己紹介を書き下ろしていた。

あぁ、ドストライク!脳内がコングを鳴らした。

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