「悪魔のいる天国」 獏
@Talkstand_bungeibu
第1話
「悪魔のいる天国」 獏
「今週末、友達のパーティーに誘われたんだけど、お前も来る?」
帰宅するや否や、彼は私に問いかけた。
「ううん、行かない」
「なんだよ、最近付き合い悪くね。皆良いやつなんだよ。一緒にいると凄い刺激があるし、力がみなぎって前向きになれるんだぜ」
「そう…」
停止した時間が二人の間に漂う。暗闇の中で道を辿るように、言の葉を紡いだ。
「私はあなたとの予定を立てたいの。あなたの友達とのじゃない」
「そうかよ」
彼はそう言って不機嫌そうに会話を断ち切り、入浴へと向かった。
3ヶ月前の私の誕生日が切っ掛けだったのだと思う。何があったか分からない。ただ、珍しく私より早く帰宅していた彼は、私を出迎えると「ごめん、誕生日プレゼント買えなかった」と一言告げた。その言葉と悲しそうな顔をハッキリと覚えている。
それからひと月の間、彼の口数が減った。とても寂しかったけれど、ただならぬものを感じ踏み込めずにいた。
そして今月。これまでとは打って変わって「自由」、「夢」、「仲間」と呟くことが増え、以前よりも生き生きとしているように見えた。
「誕生日プレゼントなんて無くても本当に良かったのにな」
そう呟いて、キッチンに視線を向ける。そこには彼と選んだ調理器具は一つもなく、どこで仕入れたか分からない鉄屑が並べられている。
「悪魔のいる天国」 獏 @Talkstand_bungeibu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます