異世界で‘‘トビラ‘‘を開く

里鈴 まいん

第1話

僕こと、寺町 陽里。いつも僕は笑っていた。誰かが悲しんだ分笑おうと。その気っかけはあの日のことである。


「行ってきまーす!」

いつものように誰もいない家に送る元気な声。両親は、事故で一年前亡くなった。もう、あの人たちはいないのに、、、。バカバカしく思えてくるが日常だからしょうがない。やめられないんだ。

見慣れた道路をタタタと走る。学校は楽しみだ。いつでも笑える。面白いクラスが僕を出迎えてくれる。

青信号が赤に変わる。

「ふんふんふっん〜」

‘‘キキっ‘‘

え?あ、赤だ。脳裏に焼きつけられる赤。あの日の両親。目の前の地獄。

‘‘死‘‘の恐怖を体験した。


今僕は、生きている。死ぬはずだったのに。まぁどーでもいい。生きてるんだから。ん?白い部屋。こんなの知らない。ここはどこだ。

「ハーイ。ぐっもっに〜んぐ!」

何もかも白い少女だ。その子は、イトと名乗った。

「ねぇ。転生しない?異世界に!もちろん神の能力もあ・げ・ちゃ・う❤︎」

転生。異世界。神の能力。なぜそこまでする。わからない。でも人生をやり直せる。これはチャンスだ。次の世界では、笑いたい。心の底から。

「はい。行きます。異世界とやらに!」

「話が早くて助かるわ。能力を二つあげるわ。」

脳裏に浮かぶ文字。


トビラ

いろいろなトビラを開けられる。条件は、一人だけの空間。すなわち部屋、近くに人がいない時のみ。


改変

物事を改変できる。むかしのことは改変できないが、未来なら多少は改変できる。


その文字が消えた時僕は知らない世界にいた。

「ん〜。能力発動!トビラ。」

どこのトビラを開けようか?あぁ…。わかんねぇ。前世でやりたかったこと、行きたかったところに行くか。お試しだしね。最初の一回ぐらいは遊ぶよ。両親に会えるかな。冥界のトビラを開くか。

目の前にトビラが現れる。ドアノブを引っ張る。そして中に入る。

「陽里?陽里なの?なんで。ここに?」

母親がいた。やっぱり優しい目だ。そんな目が好きだ。

父親は、驚きで喉から声が出ないようだった。あの佇まい。メガネの奥に隠された優しい瞳。

その二人に近づこうとすると、

「来てはダメです!戻りなさい!」

え?感動の再会はここからなのに。どうして?母親は、続けた。

「私たちに会うために自殺なんかして!ふざけないで!」

違う。違う。自殺なんかしてない。ふざけるな。ふざけるな。

「ふざけるなぁ!僕だって死にたくなかった。母さん、父さんの分まで生きて、笑いたかった!でも、能力を手に入れたからまた会えたんだ。」

僕は笑った。両親の瞳から涙が流れる。やめろよ。僕まで。うぅ。我慢できずに腕の中へ飛び込む。

「会いたかったよ。ママ。パパ。」

家族のひと時を過ごす。最後にお母さんは言った。

「もう会えないよ。だから、いっぱい甘えていいんだよ。」

お母さんは、僕が去った後トビラを消してしまうらしい。僕がこれ以上悲しまないように。自分達の気持ちを背負わせないように。

「じゃあね。元気でね。」「じゃあな」

僕は笑って手を振る。

「心配なんかさせねぇよ。もう、僕は子供じゃない。」

僕は、トビラをくぐった。

‘‘パタり‘‘

トビラは、消失した。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界で‘‘トビラ‘‘を開く 里鈴 まいん @main0029

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る