機体解説①

機体解説


【プロトスター】


 全てが新規設計された試作型ヴァルクアーマー。その目的は次世代VA開発「スター計画」の為のテストベッド機とも言える。その為、この機体には軍部から少なくない予算が割り振られている。


 しかし、計画責任者である先生が目論む本来の目的はまた別にある。謎の古代文明のダンジョンから発見された謎のデバイスを組み込む事により、これまでとは一線を画す操縦系統を確立することだった。


 詳細は割愛するが、従来のVAはレバーやペダル、スイッチ類といった機械的な入力方式に対し、プロトスターはパイロットの思考をスキャンし直接的に操作へと反映するシステム(後述のデバイスが関与している)を搭載している。


 画期的とも言えるこのシステムだが、何故かどんなパイロットもプロトスターを起動させる事が出来ず計画は暗礁に乗り上げかかっていた。しかし、アークがこのプロトスターを起動させた事によりスター計画は一つ大きなハードルを乗り越えたのである。


 また、この機体は他のVAとは異なり魔力炉を搭載しておらず、どうやら古代文明のダンジョンから発見されたというデバイスが動力源を兼ねているらしい。その辺りの設計、及び詳細は先生しか知らないらしい。


 何故アークだけがこのデバイスに感応するのか? そしてアークがプロトスターに独特の郷愁感、或いは興味を惹かれる謎とは。それはまだ、誰にも分からない。(果たして先生はどこまで知っていて、どこまでを知らないのか?)




【アークスター】


全長10.5m

全備重量22.3t


主要武装

実体シールド、ショートソード、アサルトライフルなど




 プロトスターの完成形。アークスターという名前はアークが命名した。


 基本設計の殆どをアマミヤ・アマネが行い、そこへ先生がどこから入手したのか不明なデバイスを組み込んだ機体。次世代機開発用の試作機とあって、各部関節やアクチュエータである人工筋肉は現時点で最高グレードのものを使用している。そして謎のデバイスと動力源、まさに最高級のワンオフ機体なのである。


 機体の全身は燃えるような真紅に塗装されている。これは本来、試作機を表すオレンジ系の塗装が成されるはずだったのを「なんかダサいから、この色で塗るデス!」と先生の鶴の一声で変更させられたという噂がある。


 装甲形状は流線型を意識しており、設計担当のアマネ曰く「高い運動性と関節可動範囲、そして装甲のカバー範囲と空気抵抗を考慮した結果」とのこと。結果、カラーリングと相まって燃え盛る炎のような印象を与えるデザイン、あるいは鍛え抜かれた武人を彷彿とさせる意匠となった。


 初戦闘時(プロトスター)は完全な状態ではなく、出力も本来の2〜3割程度だったようだ。しかし、それでもオーク級を倒すには十分な戦闘力を有している。アークというパイロットを得た今、アマネの手により全力を発揮できるよう調整されたアークスターは現時点で最強のヴァルクアーマーと言っても過言ではない。


 そして、さらなる強化が……?





【番外編】

・ビーム兵器について


 この世界のビーム兵器とは、指向性を持った魔力の束であるとされている。


 魔石内部に蓄えられた魔力は極低温、高磁場環境下でボースアインシュタイン凝縮によってマクロレベルでの位相が特定の方向に揃い、その性質を通常とは異なるものにさせる。これは相転移温度以下では魔力の根源たる粒子が巨視的な数でその性質を同一にし、磁場の影響で複数の粒子のエネルギー準位が最低準位に揃うものとされるからだ。これは他の凝縮と異なり純粋な量子論的確率によって引き起こされ、また各粒子の波動関数が重なり合う事で魔力全体がコヒーレントに振る舞う。そこへ電圧をかける事によって光(波動)とよく似た性質、つまりレーザー光線のような振る舞いをする魔力粒子を放出、これがビームの概要である。


 ビームとなった魔力は数千〜数万℃に及ぶ高熱と高い直進性を持ち、投入する魔力量によっては厚さ1メートルの鉄板をも貫通する威力となる。但し、そこまでの魔力をビーム兵器に使用するのは必要な魔力量がAクラス魔石数個分(小規模な発電所クラスのエネルギー)という巨額な費用対効果の観点から現実的ではない。しかしながら、オーク級の装甲を貫通させる程度の出力に限定するならば、ヴァルクアーマー用装備としての研究は現在も進められている。


 光のような性質を獲得したビームだが、周辺の電磁場と魔力偏向によってある程度の形状を固定化出来る事が判明した。これの理論がビームソードへと転用され、強力な近接兵器となりうることが期待されている。


 極低温・高磁場、そして大量の魔力と高品質な魔石が必要な事から、大型戦艦や拠点に設置される要塞砲のような大型施設にしかビーム兵器は運用されなかったが、ビーム発振用魔石の改良やエネルギー効率の見直しなどによって小型化と常温に近いビーム発振が可能となった。


 それでもやはり大量の魔力を必要とする関係上、ヴァルクアーマーに搭載するにはAクラス魔力炉が必要とされる。現在、各国に配備されているヴァルクアーマーは高性能機でBクラスの魔力炉を搭載しているため、正式な実戦配備はまだ少し先の事になりそうだというのがアマチュア軍事研究家の見解である。


 そして、それらの法則を無視した(あるいはそのように見えるほど非常に高度な制御法を用いた)ビームを操るデバイスをアーク達は入手した。古代文明のテクノロジーがどれほど発達していたのか、その概要は先生ですら把握しきれていないのが実情だ。


 ここまでしっかり読んでくれた君、全くもってここの設定は覚えなくていいし本編には多分おそらく絶対に登場しない理論だけど気にしないでくれ。人生とは、そういう無駄だけどほんのちょっぴり大切な事で溢れているのだ。


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