「切り札と切り札」
ニコルがでっち上げた
激烈な化学反応が巻き起こった。
矢の
人の
「うわああああ――――――――!!」
橋の片方の
例外を許さないかのようにそれらも引火、
燃え上がる樽の
「熱い! 熱い、熱い熱い、死ぬ――――!!」
「助けてくれええ!!」
衣服に飛び散ったアルコールを浴び、それに炎が燃え移ることで全身を炎に包まれた盗賊たちが燃え上がりながら悲鳴の限りを
まだ火を浴びていない仲間に抱きつくようにしてぶつかることで仲間を
五秒に満たない時間で、橋桁の上は炎熱地獄と化した。
「飛び降りろ――!!」
橋の下が川であることを思い出した盗賊たちが欄干を
「ふんっ!!」
右前輪を失った荷馬車が
「…………ぐぅ…………!」
移動する
「あんな切り札を隠し
荷馬車に橋の半ばまで進ませていた時の勝利の予感などは、遠くに見えた爆発と共に吹き飛んでいる。気化したアルコールを燃焼し尽くして収まりつつある火柱の向こうに、車輪を失って
仮にもう一度移動用の盾となる同じような荷馬車を持ち出したとしても、あの擱座した荷馬車から先は進めない。自分たちで絶対的となる障害物を用意してやったようなものだ。
燃え上がっている荷馬車まではそれが矢に対する盾となって橋を
「――盗賊団の首領に告げる!!」
「あれは…………?」
頭目が自分の
「確かに見た顔だ。瞬間ではあるが、確かに……」
「お前たちの
「――あのレマレダールで会った子供か!」
その子供にしか見えない騎士が、今また、自分たちの行く手に立ちはだかっている。こうして追いすがってくる力はどこから
「――ど、どうします…………」
「どうする、といったところでな……!」
頭目の側に着いている部下が頭目に呼びかけるが、頭目は声を歪ませるだけだ。
盾にしていた荷馬車がこれ以上動かないことに、今までそれを押していた火傷だらけの盗賊たちが橋を駆け
有効な手立てが尽きたという空気が部下にも伝わり、全員がしている覆面からのぞく目に
「この
対岸の少年騎士は阻塞に上体を乗せるようにして新たな矢を
「……あいつが相手なら、
「
頭目の
「荷馬車に積んでいたものを持ってこい。もしかしたら、ここからは全員無傷で橋を渡れるかも知れん。あの少年の顔立ちからして、成功する目はあるな……急げ!」
「は、はい!」
「もうこっちも時間がない。これが最後の手段となるか……どうせ
◇ ◇ ◇
橋の上から炎が
炎に巻かれながら西に
「
盗賊たちが
騎士団がその報を受けて急行してくるのがいつになるかはわからなかったが、
「そこまで
――そのニコルの疑問は、次の瞬間には解消されていた。
睨み
「助けてェ――――――――!!」
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