「最後の罠」
思わずふらりと足を流してしまい、ニコルはその身体を
「そっちからも見えるだろう!」
黒い
たまたま通りがかったのか、それともここに来る
「この女の命が
「待て!」
考えるよりも先にニコルは
「その
「俺たちが関わり合いがあるようにしてるんだよ! その
「きゃあああああ!」
盗賊が
「くそっ!!」
次の
「弓は捨てた! これでいいか!」
「
「つ…………!」
騎士団に入った際、ゴーダム
「……これで
「――へっ、わかってるよ! この女はもうこれ以上傷つけねえ! そいつは約束してやる! ――が、
「く、う…………!」
女性を
その苦痛を
傷つけられた
「小僧、お前はそこでじっとしておけよ。あんまり時間がないからたっぷりじっくりいたぶってやれないのが残念だが、まあそこは
「――――く…………!」
指が手のひらに食い込み、食い破るくらいに強く
「女、歩け! だが橋の上を走るなよ! 俺の腕から
「助けて……助けて!」
「歩けよ!」
顔に赤い線を刻まれて泣きじゃくる女性を
今まで絶対的な
今の今まで進むことさえ困難だった橋を盗賊たちは進む。橋桁に置かれている
橋を
「二十五……二十二……二十……十七……十四……」
ニコルはその
対岸に
「十……八……六…………四……」
「――ん?」
ニコルのほとんど目の前、あと数歩で橋を渡りきろうという位置で、女性を
橋の最後の
「――ふん。あの緑の糸が途中でなくなっちまったから、見せかけの普通の糸か。お前も色々と小細工をしてくれたよな?」
足を止めた盗賊が、何も持っていないように見える手を握って震えているニコルを見て
「どうだ、ブルッてるか? ガキひとりで散々やってくれやがって。借りは利子付けて返してやる。手も足も出せないってところだな、ハハ……」
「ああ……手も足も出ないよ……でも…………」
「でも?」
顔を
「指だけなら、出そうだ」
「なに――――」
ニコルの右手、今まで固く握りしめられていたそれが
盗賊が口か手を動かす前にその小石は、ニコルの親指によって強く
「むぅっ!?」
その盗賊の位置からでは死角になって見えなかった。欄干の向こう側に銀色の
盗賊たちは次の瞬間、見た。いや、正確には見えなかった。
「な――――」
欄干の陰に仕掛けられた銀色の筒が、
「なんだこりゃあっ!?」
盗賊たちは知らない。知るはずもなかった。
それがニコルが王都エルカリナを出立する際、フィルフィナから渡された
「見えねえ――なんにも、なんにも見えね――えっ!」
視界の全てが真っ暗になり、この世から光の全部が失われたと信じて
「きゃあっ!」
熱く
「こちらです!」
少年騎士の声が響く。前に引かれた女性は、自分の足が踏んだのが橋桁の木の板ではなく、対岸の土の感触であるということを感じてさらに声を上げた。
そのまま、強い力に引かれるままに土の地面を走らされる。弾むような息づかいが自分の腕を引っ張っている少年のものだということにも気づき、自分たちが橋から急いで離れているということも理解できた。
背中に感じていた悲鳴と
そんな混乱の極地から離れると、
その闇が半分薄れた辺りで、自分の腕を引っ張っているのがやはりあの少年騎士であるということがわかる。数百メルトは全力
「ここから
ニコルはその
女性が隠し
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