「差し入れの細工」
列を作った盗賊たちは全身の
あまりにも重すぎる
「くそ、
「押しやるだけでいい!
「なんだこの張り
「歩きにくいったらありゃしないぜ!」
盗賊たちが
足にかかる
「とはいえ、確実に近づかれているのは確かだからな……」
荷馬車を盾にした盗賊たちが
「――
夕日の赤さに染まりつつある太陽の
ズゥッ!!
「ぐぅっ!」
「い…………行けるぞ! あいつの矢を止めた!」
もしかしたら木箱に詰めたこの土も貫通されるのではないか――そんな
「木箱が全部
「押せ、押せ押せ、押せ――――!」
勢いに乗ってさらに押し出されてくる荷馬車は橋の半ばに
「やっぱり、正面からじゃ無理か…………」
「――あんちゃん」
前方に神経を集中していたニコルの背後で
「マデク!
「わかってるよ。でもあんちゃんに差し入れしないといけないと思ってさ。いいもの持ってきたんだ。ほらさ」
ふたつの
「これは?」
「うちの家の秘蔵の
ニコルが何かをいう前にマデクは
「あいつら荷馬車を盾にして進んでるんだ。おいらたちが
「そうだね……せめてあと一時間くらいは
エメス夫人の一行が次の街に入るまでの間、追いつかれることがないだけの時間を稼ぎたい――正確にどれだけの時間を稼げばいいのかは不明だったが、長ければ長いに越したことがないのだけは確かなことだった。
「じゃあ、差し入れが役に立つじゃないか」
「この葡萄汁が、かい?」
「
「ああ……まあね」
橋の真ん中、百五十メルトあたりからやや手前あたりに、橋の両方の
「――甘っ! 凄く
瓶をラッパ飲みしたニコルが
「本当はちょっと水で割るんだけどね。でも飲めないことないさ。元気出るよ」
「――ああ、疲れが取れた気がする……ありがとう、マデク。でも君は本当に仲間のところに行った方がいい。ここから本当に危険になる」
「見てたいけど、あんちゃんが邪魔だっていうんなら
「君はその
にっ、と歯を見せて笑いかけてきたマデクの本当に子供らしい
「もう少ししたら始める。マデク、なるべくここから
「あんちゃん、生き残ってくれよ。勝ったらまた葡萄汁やるからさ」
「ああ、努力する」
ニコルは矢を
「……君のような子のために戦うのが
ニコルはいったん弓から手を
続いて一本の矢を引き抜くと
「火矢の作り方も習っておいてよかった」
矢狭間の穴から、鏃の根元から燃える矢を突き出し、弓に番える。
盗賊たちが必死に押し
◇ ◇ ◇
最初に盗賊側で異変を感じ取ったのは、荷馬車の
「――なんか、変な
相当の力を込めないと前に回ってくれない車輪を
「そりゃ、この何日か、
「
ぎし、ぎし、ぎしと一歩、一歩と足を踏ん張らせ、全力を込めて十数セッチごとに荷馬車を前進させる。もうどれだけ汗を
「なんか、つんとする、臭い…………消毒液に、似た……!」
「これは、酒の
「さ、酒…………?」
「橋の、端っこ! 樽が置か、れてる、だろ!
「シュピリ、チュタス、ってなん、なんだよ…………!」
「アルコール、九割、五分の、酒だ…………! 知らねえ、のか……!」
「そんな、モン、ただの、アルコール、と変わり、ねえじゃ、ねぇか……!」
「だから、果実を、
「じゃあ、今、結構、ヤバいんじゃ……!?」
「
その言葉が冗談とは思えないほどに辺りのアルコール臭は強かった。
「気化した、アルコールは、空気より、重いから、な…………! 橋の上、
「まあ、火の気、なければ、平気か……!」
そんな盗賊にとって、悲運なこと、幸運なことがそれぞれひとつずつあった。
悲運であったことは、気化したアルコールを盛んに噴き出している樽に、ニコルが火矢の
幸運であったことは、盗賊が自分で押す馬車に視界が
「――細工は
矢の先端に巻いた包帯がいちばん燃え上がる
それが橋の上における第二の
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