「逃げるか、逃げないか」
「君は
一度瞬きをしたまま、鼻も
「レプラー……多分、
舌に乗る言葉の苦さに
「僕はここに残り、
がっ、とレプラスィスが口を開け、ニコルの
そんなことは
ニコルにはその気持ちがわかる。馬は
「ありがとう、レプラー……最後に乗る馬が君だったことは、僕の
自分の腕をニコルがもぎ取って
「ここでの君の役割はない! レプラー、君は
少年と馬が
「――――」
貴重な時間を
一分ほどしてニコルが後ろを
「あんちゃん、あの馬のこと、好きだったのかい」
レンガなどの
「……どうしてそう思うんだい?」
「簡単だろそんなの。そんなに泣いてたら、そう思うしかないよ」
「…………」
「あんちゃん……死ぬつもりなのか?」
「死にたくないけどね」
「だったらあんちゃんも逃げなよ。おいらたち、あんちゃんが逃げたっていうこと、ずっと
「ありがとう。でも、そういうわけにはいかないんだ」
「どうしてさ……あんちゃんみたいないい騎士は、生きて立派な騎士にならないといけないよ……死んだらそれもできないじゃんか……」
「
「あんちゃんだってまだ大人じゃないだろ」
「大人になりかければわかる……。逃げればいい時もある。逃げるな、なんて僕は他人に言えない。でも、逃げたらダメになるとわかっていたら、逃げられないんだ。ここで逃げたら僕は逃げたことを後悔し、それを一生引きずって生きるだろう。そんなことを
「……あんちゃん、
「
「かっこいいと思うよ」
ニコルは笑った。止まらない涙を流しながら、
「そんなあんちゃんに
「……贈り物?」
「中身はちゃんと減らしてあるかい?」
「
大人たちの
「そんな大きさの樽だったら、
「いやあ、
十数個の樽を運ぶ男のうちのひとりがいたずら気な
「……何が入ってるんだい?」
「俺たちの大好物ですよ。俺たちはこいつがねえと生きていけないんですわ」
「ですが、
周囲の男たちがにやにやと笑いを
わからない、という顔をしてニコルは
「あんちゃん、これにはね――」
大人たちと同じ顔になったマデクがニコルの耳に口を当て、ぼそぼそと言葉を
「……そんなものが?」
「すごいだろ。きっと盗賊たちもびっくらこいてクソ
マデクの声に大人だらけの住民たちはへい、と声を
「……言うほど絶望的じゃないかも知れないな…………」
涙が流れた頬を手で
◇ ◇ ◇
ニコルがこの鉄橋のたもと、集落に引き返してから十五分足らずだったろうか。
「――
深い
「下がれ、下がれ下がれ!」
「落ち着けよー! 自分たちで
マデクの声に従い、住民たちが足音を立てない動きで橋の上から手前側に
「マデク、ありがとう。助かった……キミのことは忘れないよ」
最後の住民が橋から退避したのを
「馬鹿いうなよ。ちゃんと生き残ってくれよ。そのためにおいらたちも手を貸したんだ」
「わかった。なるべく生き残る」
「
集落に戻らず、彼等が用意しているらしい隠れ
「……来たか……」
――見覚えのある盗賊団が、対岸の橋のたもとにまでその姿を見せていた。
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