「作戦と覚悟」
ニコルを背に乗せたレプラスィスは、全速で草原の中を走っていた。
それは野を渡る
風に
「すまない、レプラー。君をこんな速さで走らせて」
「今は本当に一分一秒が
レプラスィスはそれに
「――
高速度に乗ると
「そこで僕の練習に付き合ってくれた馬が、ロシュ……ロシュネールっていう馬だった。彼女もいい馬だった……
農耕馬の類であるロシュネールは、やはり戦う馬として生まれ育てられ訓練されてきたレプラスィスとは決定的な
「いい走りだ――いや、
ニコルが目指していたのはウディエム
今さらエメスたち夫人の一行に合流してその中の一騎として加わっても、大勢に
――それよりは。
「それよりは橋のたもとに
それがニコルの判断だった。
「橋に障害物を
もう太陽が午後の
「僕にその時間が稼げるかどうかだ。そのためには用意の時間がいる。レプラー、
一体となった人馬は後方に大きく
◇ ◇ ◇
二時間をかけて歩いてきた距離をものの十数分で駆け
レプラスィスが歩を止める前にニコルはその背から飛び降り、群がっている十数人の人々の前で声を張り上げた。
「ゴーダム
「と、盗賊!?」
「この橋に向かって
「いるよ」
その声――住民たちの
「おいらがこの集落の責任者だよ」
「…………君が? 君みたいな子供が?」
住民たちの垣根を割って前に出てきたのは、十歳前後くらいにしか見えない男の子だった。
「あんちゃんご
「あ――――」
ニコルは思わず
「おいらは
「ああ。だから物資と労力の提供を求めたい。橋に障害物を仕掛けて盗賊団の進行を
ニコルは家々が点在し、その間を畑が
「あの
「あれは古くなったから解体の
「じゃあ、あの
「よーし、じゃあ集落総出だ! みんな出てこい! あの廃材のありったけを荷車に乗せて橋のたもとに運ぶんだ!」
男の子の号令に住民たちが動き出す。この男の子が集落の責任者であるということを
「――あと、弓を持っている方がいれば借り受けたい! ありったけの矢も!」
「
「勝手に借りちまえばいいんだよ、
「ニコルだ。ニコル・アーダディス騎士見習いだ、少年」
「少年じゃないよ、おいらはマデクだ。あんちゃんだって少年じゃないか」
「そうだった。よろしく、マデク」
マデクと名乗った少年とニコルは
◇ ◇ ◇
鉄橋は集落の住民の数十人によって群がられ、
「橋桁の上では廃材は積み上げなくて結構!
それに
「この糸を
「張られた糸が足首の高さにくるようにお願いします!」
住民が
指示を飛ばしながらニコルは借り受けた弓の
「なぁるほど。橋を馬で渡ることを盗賊たちに
「橋なら
「ゴメンよ、うちからは兵隊は回せないんだ。戦いは
「
ニコルは弓の弦を張り終わり、指で弦を
「よく飛びそうな弓だなぁ」
ニコルが立つ
「百本か……相手は二百騎、矢で
相手に押し切られて橋を渡りきられれば、あとは
百数十人とまともに斬り
「レプラー」
ニコルは少し離れた場所で休んでいるレプラスィスの元に寄った。全速力で十数分を駆けたレプラスィスの息は上がっていて、もう少しの時間を
「よくここまで付き合ってくれた。ありがとう。僕は君に、本当に感謝しているよ……」
少年の手に
この少年はとんでもないことを言い出すという予感は、次の
「――だから戻るんだ、レプラー。今から
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