「少年騎士の、誓い」
「血の……
小さく
本当に自分の体に血がついているのか? それがあるとすれば、バイトンを
確かに、血の
しかし、サフィーナが実際にそれを
しばしの時間、雨雲が月の明かりを
「ニコル!
「えっ!?」
サフィーナの
「あ…………!」
直感は、当たった。
ニコルの
「こ……これは…………」
額を
「……ニコル、これはどういうことなのですか?」
深夜。人気のない
その事実の
それは、ニコルが初めて見せられるサフィーナの表情だった。
「――ニコル、あなたはまさか、バイトン
「サフィーナ様、そこから先は、仰らないでください!」
大声を出しかけ、ニコルは自分の声量を
「……どうかお願いします。そこから先は、どうか……」
「なら、
「っ、ぐ…………!」
サフィーナの激しい
バイトンを斬らねばならなかった自分、自分に斬られねばならなかったバイトン。
トドメを差したのはゴーダム公の
もしも、その
事情があってやむなくやったのだと大声で叫べれば、全てのつかえは
――だが。
「します!」
「それが、ある方との
「ニコル…………!?」
一度
「サフィーナ様、自分をお信じになれないとならば、それまでです。サフィーナ様に対してお話しできない秘密を僕は抱えています。この血が誰のものであるかも、僕は打ち明けることができません。――ですが、サフィーナ様、僕はこれだけは確かに言い切れます。僕は、騎士の道に外れていることは、
「…………」
それだけは、わずかなりとも目を
「……僕は、ある方との誓いを
「……ニコル、あなたは……」
あらゆるいたたまれなさを
呼吸を止めながら少年の
「……わかりました」
ニコルの
「あなたが私に隠し事をしているのは、確か……しかし、あなたが私に
「――サフィーナ様…………」
言われながらも、ニコルは頭を上げられなかった。
「私は、あなたが無法なことをする人間とは思いません。きっとその不可解なことにも、事情があるはず。その事情を誰かのために明かせないというのなら、私は理解します。この数日、父の様子がおかしいのも、あなたが苦しんでいるのもきっと一本の線で結ばれているのでしょうが、私はもう、これ以上
サフィーナがニコルの肩に手を
「このスカートの血は、どこかで落とさねばなりませんね」
「は、はい…………」
「
「そ、それなら、
「はい。――ニコル」
「……サフィーナ様?」
歩き出そうとしたニコルが、動かないサフィーナに
「あなたは大変
「いえ…………」
「ゴーダムの家のために、父のために、騎士団のために、あなたがどれだけその身と心をすり
「お気になさらずに、サフィーナ様。さあ、早く参りましょう。他の人間に見つかっては
「私に見つかってしまったから、もう面倒なことになっていますものね」
「サフィーナ様……!」
「ふふ、ゴメンなさい」
困った顔をしているニコルにサフィーナは微笑んだ。この少年を困らせることに、自分は快感のようなものを覚えているのだ――そんなことに少女が気づくまでには、まだいくらかの時間が必要だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます