「真実をこじ開けるもの」
夜が明けたゴーダム
早朝、
この話は朝食時までには駐屯地にいた
「――あのバイトンが、暗殺されたってよ…………」
「真夜中に殺されたって? なんでそんな時分に……」
「長期
「しかし、あのバイトンを
「胸に
「こんな騎士団駐屯地の近くにも
「ゴーダム公爵閣下も、大変お気を落としのようだった……バイトン正騎士の
「もう身内がいないっていうんで、もう
「遺灰が納められるのか。『騎士の
騎士見習いの正装に身を包み、
空っぽな気持ちのままで、『騎士の棺』の前に置かれている
ここから
しかも、マルダム・ウィン・サデューム騎士の次、
「なんてことなんだ…………」
時折、そんな光景を
白い花束を
騎士たちのざわめきと共に、エメス夫人とサフィーナ
ゴーダム公もニコルの方をちらりと見ただけで声をかけることもなく、ニコルの方に
「――バイトン正騎士…………」
バイトン・クラシェルの名はゴーダム公爵騎士団を裏切った者ではなく、ゴーダム公爵騎士団のためにその尊い命を
その真相を知っている者は、自分とゴーダム公くらいのものだ。
ゴーダム公が自身の近しい者に語っていたとしても、それはニコルの
「――よう」
意識が半ば拡散し、このまま
「
ニコルの返事も
――ダクローだった。
「…………」
「
「…………」
「おいおい、仮にも同じ小隊だろ? 同じ上官と
「…………」
「嫌いと決めた相手にはとことん
「……何か用ですか?」
「世間話さ」
「今は、そんな気分じゃないんです。どこかに行ってくれませんか……行かないというのなら、
「いいのか? お前も興味がある世間話だぞ。ある
「噂に興味なんてありません」
「あのバイトンが裏切り者だったかも知れないっていう噂でもか?」
「興味あるっていう目だな」
「……誰です、そんなデタラメを
「俺じゃねぇよ。俺と世間話しようなんていう人間はこの騎士団にはいねえ。噂を
「…………それで」
「お、乗ってきたな。まあ当然か。この話にはお前も
ニコルの心臓が
「話は簡単さ。この一週間のことをつなぎあわせればな」
ニコルの目が自分に向いていることを喜ぶかのように、ダクローの
「まず、前提として『
「僕が……なんですか」
「お前が俺を
ニコルが口を開いたが、舌は空回りした。
「それを公爵閣下が
「…………」
「そんな宣告を受けたお前がシレッと
ダクローの言葉を耳で受ける
「これだけおかしい話をつなぎ合わせれば、ひとつの筋書きが導き出されるのは無理ないだろ。――作戦内容を
「…………その裏切り者のバイトン正騎士を『騎士の棺』に
「バイトンが裏切り者だったと知れると、騎士団の統制が乱れる。だから表向きは賊による暗殺に見せるように工作して、誅殺する――バイトンの遺体を最初に見つけたっていうのは、ゴーダム公爵閣下自身だって聞いたぜ。それも
「……全部
「その
その口調は激しくはないが、
「閣下もお前も傷を負ってる気配はない……あの
「…………!」
声も漏らさず表情も動かさなかったニコルも、瞳の奥の反応だけはどうしようもなかった。
「へっ。
ニコルはダクローから目を
「ここまで俺に
「…………ぐ…………」
ここから
ここで打てる
ニコルはそれを頭で考えるのではなく、自分の心に問いかけることにした。
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