「銃声のあと」
「うっ!」
「レプラー!」
悲鳴を上げながらレプラスィスの首にニコルはしがみつく。本来、音に
「ニコル!」
動きを止められたニコルたちにゴーダム公はガルドーラを走らせる。紅い覆面の頭目が右手の
だから頭目は、
「っ!」
再びの
「うっ!」
ゴーダム公の胸を守る
「閣下ぁっ!!」
ゴーダム公が背中から地面に落ちる。
「――大声を上げるな」
次にニコルを驚かせたのは、銃弾を受けて派手に落馬したはずのゴーダム公がすぐさま上体を起こしたことだった。
「閣下! お傷は!」
「少し装甲を
「拳銃弾一発で落馬してしまうなど、私も
「よ……よかった、大事に至らなくて……」
盗賊の一団もまた駆け抜けていく。銃弾を胸に受けても平気な顔で起き上がってくる公爵に対し、直接
ニコルが時間差で打ち上げさせていた照明弾も弾切れとなり、辺りは月光の光しか差さない深夜の闇となる。レマレダールを発した騎馬隊が
「お前こそ
「……閣下は、どうしてこんな危ないことをなさるのですか!」
「うん?」
助けた少年がいきなり食ってかかってきたことにゴーダム公爵は思わず首を
「いくら閣下の
「お前は何か
「私が守ったのはお前ではない、私だ」
「…………閣下?」
「考えてもみろ。目の前でお前が死ぬのを私が
ゴーダム公はまったくの真顔で話していた。
「そういうのは私はゴメンだ。まったく、お前のような
ゴーダム公はそう言って
「独断で飛び出した
「……しゅ、しゅみません…………ですが、閣下」
「なんだ?」
ニコルの頬から指を
「結局、この作戦に参加していたのは
『お前があっと驚く部隊が用意されている』という言葉、あれは」
「驚いただろう、私ひとりだけで」
表情も変えずに言って見せたゴーダム公に、ニコルは
「失礼ですが、無鉄砲なのは閣下も同じでは……」
「本当に失礼な
笑うゴーダム公が
「私は
「ですが、連中に先回りされ続けるという問題が……」
「私たちが今回、奴等を
ニコルの口が開いたが、舌は空回りするだけだった。
「今回の戦いで確信が得られた。
「は……はい。しかしもうひとつ、疑問があります」
「聞きたがりだな。まあいい。答えよう。で、なんだ」
「今回の作戦に僕が参加できたのは、まったくの
ゴーダム公はすぐには答えない。風の音も返答にはならなかった。
「僕がダクローといざこざを起こしたために、閣下は僕を騎士団からいない人間にすることができて、戦力に加えることが可能になった…………僕がダクローと問題を起こしていなければ、どうなさるおつもりだったのです?」
「答えは単純だ。私ひとりで全てを
「――――」
ニコルが絶句する。公爵ひとりでレマレダールの街に
「あ…………は、は…………」
少年の胸の中で笑いが起こる。戦闘の
「あ、ははは、はははは……」
「
「お、可笑しいです。とても公爵閣下のような立場の方がなさることとは、思えません」
「そうだな。私もそう思う」
「あはは、はは、はははは――」
「ふふふ…………」
お
『笑うのだ、ニコル。心から笑えることは幸せなことだ。今は笑っておけ、心の底から。――もうすぐ、笑うこともできなくなるからな……』
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