「初陣・――矢が引き裂いたもの」
――時を、二分ほど
準備
最初の最初に巻き起こった
三十人をやや
「えっ!?」
のろのろと進む
放たれた矢が引く音を
背中をトゲ付きの
「矢……」
ニコルの目の前でさらにひとりの騎士見習い、四頭の馬が体に矢を突き
「矢だ! 伏せろ!」
「ニコル!」
わめき声か警告か区別のつかない声が飛んだのに重なり、ニコルの
ほぼ
「うわぁっ!」
「狙われてるぞ!?」
金属の雨が同じ金属の板に降り注ぐように高い
「この数の矢は何だ!?」
「落ち着け! 混乱するな!!」
前の方からチャダ正騎士のものらしい指示が飛ぶが、それを聴いた者の半分も実行に移せない。
さらに第二波の矢の
「全員下馬!
「後方から攻撃を受けています!!」
「後ろから!?」
「ぐぅっ!」
「うわあっ!!」
隊の前後から
「幌馬車の前に集まれ、それで矢の攻撃をしのげる……!」
「後ろは幌馬車が盾になってくれています!」
「
完全な不意打ちを食らった中で、チャダ正騎士は部隊を統制しようと声の限りを振り
「倒れた馬を積み上げて
「
「シフィー、すまん!!」
前方では矢を受けて地に伏せた馬の体を複数人で力の限りに持ち上げ、
「レプラー、君は無事かい……!」
気が
背負わされた荷物
「よかった。君は冷静で度胸がある。さすが
部隊の後方にいた
「後ろから回られていたのか。完全に待ち伏せされていたんだな……幌馬車を表に
幌馬車を洞窟内に進めるか、表に置いておくかで少しの論議があったのだが、その結果次第で自分の運命が尽きていただろうことにニコルは苦笑した。後方からの攻撃は三十人ほど。四人程度の見張りならあっという間に殺されていたところだろう。
「マルダム、君のおかげで助かったよ。ここに突き
二撃目の斉射から守ってくれた背中の相棒にニコルは語りかけた。
「でもちょっと重いかな。命の恩人に言うのもなんだけど、退いてほしいんだ。お願いだよ」
マルダムは答えなかった。
「足が外に出てるんじゃないかな。早く引っ込めた方がいい。ここから
マルダムは
「マルダム? さすがに君ひとりと
マルダムは応えなかった。
「マルダム…………」
脳を走る血管に氷が注がれた
背中のマルダムはニコルの言葉に応えず、動かない。
「――そんな」
思考力が薄れた頭で、ニコルは体を動かした。背中にのし
「そんな…………」
そんな、おかしい。
マルダムがマルダムでなくなっているかのようだ。
それが意味することをニコルの頭はわかっていたが、心が理解することを
が、そんな
現実を見ずにこの世を生きるのは、目を閉じて
「ニ……ニコル、それ…………」
側にいるアリーシャの目が
だが、心が見るなと命令する前に、頭が体を振り
顔の横半分を洞窟の地面にぺたりと着けて、マルダムが倒れていた。
兜も鎧も着けた騎士見習いの姿で伏せ、動かなくなっていた。
ニコルは反射的に手を
「マルダ――――」
赤く
「――――ム」
ニコルの心臓が、自ら強く縮んだ。その
「うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
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