「取り引き、そして返答」
空腹と
「うぐっ!」
訓練用の分厚い
「立てぇ!」
ニコルを壁にぶつかるまで
「訓練中に
「は…………はい…………!」
立とうとする最中にも突き入れられる木剣の
「くぅっ!」
突き、
「
広い訓練場の屋内で共に訓練する
「――お願いします!」
体の
「やってんな」
熱気がこもり木剣と木剣が打ち合う音が
「ダクロー……それにカルレッツ……」
訓練用の兜たちの中でそんな
「そんなに
「騎士見習いは
「第四条だよ。――ニコルなら、そこにいるぜ」
「あんがとよ」
この数年単位で訓練場に顔すら見せなかった
小さな学校の運動場ほどの広さがある訓練場の中で、ニコルを見つけるのにそれほどの苦労は
「借りるぜ」
「おい」
訓練用の防具をひとつもつけていないダクローが、近くの訓練生の手から木剣をむしり取る。カルレッツもそれに
「ダクロー、
「お前が体を動かしたがるなんて珍しいな」
「ちょっと
「勝手にしろ」
少し派手に動けばぶつかり合うほどに混雑した訓練場の中を、人の波を
ニコルは目を防護する兜ののぞき穴に
「おはよう、ニコル。
「…………おはようございます…………」
カルレッツの出現に、ニコルを打ち据え続けようとしていた訓練生が無言で下がる。その
「そのふらつき具合だと、昨夜は
ニコルは答えなかった。剣を杖にせず、
「――どうです? 私たちと取り引きしませんか?」
「…………取り引き…………?」
「ええ。取り引きです。まあ、よく聞いてください」
「まあ最初は私たちも、
「それが…………」
どうかしたか、とまでニコルは言葉にできなかった。
「簡単なことですよ。奥方様の君への思い入れは
「――――」
背後で
「君を追い出したところで私たちは一エルも
「お……お断りします……」
その短い一言だけは、息も絶え絶えのはずの少年から、
「す……少しばかり、目上の方に、気に入られているといって……それにつけ込むなんて、騎士の……騎士のすることでは…………ありません…………」
「このままだとここにいられなくなりますよ? 君のその信念なら、自分の苦境を
「こんなこと、やめに……やめに、しませんか…………」
ニコルの
「あ……あなたも、騎士団に所属する人間でしょう……あなたがやろうとしていることは、騎士にあるまじき行い…………」
「
カルレッツがぶん、と木剣を大きく振り
打撃にニコルの体勢が大きく
「君は旧い価値観でガチガチの人間なんでしょうけれどね。君と志を同じくする人間なんて、この訓練場にいくらもいませんよ」
いつしか二人のやり取りを見守るために訓練の手を止めていた騎士見習いたちが、その言葉にびくり、と体を小さく
「騎士の忠節と
「……なら、
「騎士見習いの身分だけで十分
「父の力は絶大なのでね。ここに納入される物資のほぼ全てが父の手を経る物だ。
気を抜くと下を向いてしまいそうになるほどの
「君には
ニコルの顎をカルレッツの剣の先が持ち上げる。そのまま少し腕を
「君にも
「断る」
顎を
払った向こうに、疲れ
「断る! そんな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます