「追い込みの手法」
「あの
ニコルは思わず大声を上げていた。上げざるを得ない事態だった。
外からの雨やゴミで
ニコルも実際にポンプを
「いったい、どれだけの水を川から汲んでくればあれを満杯にできるんですか」
「だいたい、バケツ二千
「二千杯分!?」
荷車にバケツを二十個
「……そもそも、あの小屋は小川につながっている管から自然に水が供給される仕組みになっているんでしょう。水がなくなることなんてないはず――」
「気づかなかったのか? その管が
「業者を呼んで修理しないといけないんですが、明朝にならないと来ないんですよねぇこれが」
「ニコル、報告書にはお前が管をぶっ壊しておいたと報告しておいたからな」
「
上ずるくらいの声を出してしまってニコルは自分の顔が
「そんな……壊した覚えはありません!」
「覚えてないだけだろうが。実際にお前も一日水を汲んでただろ。お前じゃない可能性もあるかも知れんが、お前だっていう可能性もあるんだ。壊した責任者の名前は、報告書に書かれておかないとなぁ」
「始末書も書いておいてくださいよ。
「…………!!」
ご
「入団初日に始末書書く
「…………僕ひとりで水槽を満杯にするなんて無理です!」
「お前がぶっ壊したからこうなってるんだろうが!」
鼻と鼻がぶつからないのが不思議なくらいの勢いで顔を寄せたダクローが、
「テメエの不始末の
「……
「周りに手伝ってくれそうな奴がいるか、確かめてみたらどうだ?」
突き
「く、ぅ――――」
水を打ったように静かだが、一様に敵を見る冷たさに
その目のどれもが、お前を知っているぞと語っていた。
「管を修理している間、馬に水を飲ませないわけにはいかないよなぁ? というわけでニコル、がんばってくれ――
「ダクロー、そろそろ食堂に行きましょう。良い席が他人に取られます」
「夕飯を食う準備をしないとな。俺たちは
「ニコル君。
ヘッ、という
「ま――まずい…………!!」
ニコルは道具置き場となっている建物に走った。その中から一台の
「あの二人の
明日の朝までに何往復できるのか。明日の早朝から長距離走、続いて
そして、あの二人は、きっと明日の朝食を食べるのも
「どうすればいいんだ……!」
牽引荷車を引いて
「レプラー!?」
「そうか……君も僕を手伝ってくれるのか! そうなんだね、レプラー!」
「レプラー、ごめん。
申し訳なさに
「うわ、大きな舌だなぁ。くすぐったいよ、レプラー……。でもやる気を出してくれるのか。ありがたいよ、レプラー。本当にありがたい……」
ニコルがレプラスィスの顔を体の全部で抱きしめる。少年の金色の
「レプラー、僕はこんなことで負けるわけには、負けているわけにはいかないんだ。でも、こうやって
牽引荷車を
夕日を背中にし、大量のバケツを荷車の上で鳴らしながら走る少年と馬の両者の姿を――ある
「――あれが
年かさ――年かさも年かさだろう。
「なるほど、変わってる
目立つのを
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