「騎士見習いとしての、仕事」
「君に担当してほしい仕事場はここだよ」
マルダムに連れられ『仕事場』を案内されたニコルは、眼前に広がるその光景を見て思わずほっと息を
「ゴーダム
「ええ、本当にそう思います…………」
少し足を
「君はひとりで
「馬の世話は慣れています。八
馬の
「君の家はその……馬を持てるような家じゃないんだろう?」
「知り合いに貸し馬屋の老人がいるんです。その
「そうなんだ。……
「物の
「そっか。じゃあ、僕は他の仕事があるから…………」
マルダムから道具や物資の所在を教えてもらったニコルは、
「みんな、初めまして。僕はニコルっていうんだ。
目の前の人間が
「じゃあ、
他の棟の厩舎でも騎士見習いたちらしい
「あの二人が働かないっていうしわ寄せだよね、これは」
ダクローとカルレッツは
「まあいいや、今はこの馬たちの信用を得なきゃ。そうだろう、みんな――ああ、おはよう、レプラー。今日も
厩舎のいちばん
「よかった。
表に一輪の
「これが二十頭分か。世話のし
◇ ◇ ◇
馬の糞の始末、厩舎の
厩舎での仕事は数多く、重労働だ。馬は一日に大きな
餌だけで、一日に必要な量は約十五カロクラムに達する。しかもこの量を長い時間をかけて
そして馬にも食べ物についての
「ジャゴ
ニコルは馬が好きだった。リルルと
馬もニコルのことを好いてくれるのが、ニコルの馬好きに
ニコルは今まで、馬に悪意を向けたことがない。だから馬がニコルに好意を向けるのも自明の理だった。
「レプラー! 君だけを
午前の終わりごろから始めた作業は数時間続き、服が汗にまみれ馬の体臭と
「夕食は午後五時だっけ。一日二食だっていうのは、ちょっと調子が
今日最後の餌を、馬の前に並べられているそれぞれの容器に投入し、体から湯気が出るほどに汗だくになったニコルは台の上に
これでも今日は楽なのだ。午前の大半は訓練に
「訓練でくたくたになっているところをこの仕事か。でもこれが騎士見習いなんだ。
「おう、
背後でした声が、ニコルの神経をざわめかせた。
反射的に
「…………
「別に疲れちゃいないけどな」
「まだ全然仕事が終わってないみたいですねぇ」
最低限の
「ふん、レプラスィスもいやがる」
厩舎の端までを歩いたダクローがレプラスィスの前で止まる。静かな敵意を
「このレプラスィスがお前のものになったっていうのは、本当か?」
「閣下が僕に与えると
「閣下も
「……どういうことです?」
カルレッツの
「このレプラスィスは騎士団でも有名な馬なんだよ。千二百頭もいる馬の中で、騎士団の
――
ニコルの頭にその二文字が
「まあ、おいおいとわかるだろ。自分が今置かれている立場がヤバいって。今日入ったばかりの新人の名前がもう口から口に伝わって広まっている――全員がお前の名前を知ってるぜ。嫌な
「……そんな」
「まあ、いいんだ、どうでもいい。そんなことは
「それより君にはちゃんと仕事をしてもらいませんとね」
「……仕事はしています。厩舎の仕事は終わりました」
「ちゃんとしてる? 終わりましただ?
ダクローは厩舎から見える
「あの
この厩舎で使う水を一時的にためておく、建物全部が大きな
「おいおい、
「というわけです、ニコル君」
ダクローとカルレッツが言わんとするその意図を察して、ニコルは血の気が引いていくのがわかった。
「今から川に行って水を汲み、あの小屋を
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