「授けられた翼」
ゴーダム
力を
「ふぅっ!」
ゴーダム
「ははは、負けた――負けたな! これは
ニコルを乗せたレプラスィスはその激走を止めない。終点近くで停止したゴーダム公を
「ニコル、どうした。止まるがいい。私にお前を
「閣下っ!!」
「レプラスィスが止まってくれません! レプラー、止まってくれ! レプラー! レプラー!!」
「――いかん!」
ゴーダム公とオリヴィスの口から同じ言葉が飛んだ。反射的にオリヴィスが投げた馬上鞭を空中でひったくるように取ったゴーダム公がそれでガルドーラの
「レプラー! レプラー! レプラスィス! どうしたんだ!
暴れ馬のように――いや、暴れ馬そのものになったレプラスィスの背中にニコルが必死にしがみつく。ゴーダム公が駆るガルドーラの
問題は、
そして、前のめりに
「こ……この速度じゃ、飛び降りたら地面で何十回転がることになるかわからない!」
周回走路の直線を走りきり、
飛び降りるなら、周回走路を
「ダメだ! それじゃレプラーが危険になる! 僕がレプラーを
「ニコル!」
ニコルの勝利に心を
「え? え、え、ええっ? ニ、ニコルはなにをしているのです? は、早くこっちに
「そんな
「――――はぅ」
意識を失ったエメス夫人が
「ニコル! 今行くぞ!」
ガルドーラに鞭を入れて全速を引き出し、レプラスィスを猛追するゴーダム公が
「私が隣に並んでお前をレプラスィスから
「――いけません閣下!!」
振り
「僕がレプラーから
「馬のことはいい! 馬ごと転べばお前の命がないぞ!!」
「レプラーを見捨てることなんてできません!!」
感情の全てを
「レプラーは、レプラスィスは僕の気持ちに
「ニコル…………!」
愛馬に鞭を打ち続けていたゴーダム公の手が止まる。
『だ……だが、どうするというのだ!』
我を忘れ暴走する馬をニコルは制御できない。今はニコルの体重移動でなんとか馬体の重心を取り、転倒を辛うじて免れ続けているが――それもあと数分も
『ニコル、想いだけでは、勇気だけでは困難は解決できないぞ! その勇気と合わせる
「どうする……どうすればいい! 考えろニコル!」
次の瞬間、いや、今この瞬間にもレプラスィスの体勢が大きく崩れ、時速七十カロメルトを
「頭を冷やして考えるんだ! 何か、何か使えるものはないか! 転ぶのが
前方にあるのは
「しかし、こんなもの
ふっ、とそれがニコルの鼻を
「あった! あったぞ! あったぞそんな場所が!! ――レプラー!!」
危機の中に希望を見出した少年の
「針路を右に! 右に少しだけ折れるんだ! そうすれば僕たちは助かる!」
レプラーの右目がその方向をのぞく――今まで
「
「――――!!」
音にならない叫びを息で発したレプラスィスが、左前脚の
「よし! よくやった! よくやったよ、レプラー!」
絶望を
「レプラー! あとは、あとはどうすればいいかわかっているね!?」
レプラスィスは前に向かって倒れ続ける
「そうだ! あとはレプラー! 君に任せる!
任せておけ、とレプラーは息だけで
今、この瞬間、少年とその愛馬は身も心もひとつにつながっていた。
あたかも
運命の
「レプラー、行けぇぇぇぇぇぇっ!!」
最後に残った力、そのひとしずくまでをも振り
「――ニコル!!」
ゴーダム公は、その空中に見た。確かに見た。
少年が
きらめくような
そして。
海を
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