「敗北の理由」
長円状の
「――後ろを振り返ったところで、一メルトとして差を
ゴーダム公が
「後ろを振り返るために
青毛の馬の背にしがみつく少年が
「そうか、もうこちらは見ないのか。いい
前を
「
ゴーダム公は愛馬の
「く――――!」
背中を火で
ニコルが第二の角を抜け長い直線の真ん中に入る
「いや! 離せるわけがないんだ! 僕は、僕たちは、閣下に抜かれる前に終点に入ってしまえばいいんだ! それで僕たちは閣下に勝ったことになる! レプラー! お願いだ! がんばってくれ!」
今までに体験したことのない、風を切り
ニコルの頭には、たとえこの勝負に負けたとしてもゴーダム公が自分の
「そんなことは許されない! 僕は――僕はゴーダム
背後から
「僕は
ニコルが
「君もそのひとりだよ! 今ここで僕たちが負けたら、僕が君に乗って走れるのはこれ一回きりになってしまう! 僕はそんなのは
激しい
「僕は君を
「――――――――!」
レプラスィスの
「むっ!?」
レプラスィスが切る風の尻尾をつかんだ――そう確信しかけたゴーダム公が目を見張った。速度を上回ることで
「
それは半分正解だった。これが頭打ちだと思われていた全速力のレプラスィスが、さらにその上の全速を出し始めたのだ。速度は
「ここから加速するとは! まだ
見えない
どちらにしろ、同じ事だ。ひとりと一頭は今まさに、ひとつの心で走っているのだから。
「レプラー! 行けぇぇぇっ!」
第三の
「よくやる――よくやっているぞ! ニコル!」
ニコルが第三の角の出口を飛び出すと同時にゴーダム公はその入口に
「しかし、残念だな。ここまでだ。私はお前を捉えた。ガルドーラは最後の
この白熱する勝負に、
「そして、それを使うまでもなくもうすぐ追いつく!」
「――閣下!!」
第四の角の真ん中で、ついにガルドーラはレプラスィスの
「捕まえたぞニコル!!」
「くっ!!」
もつれるように二頭は平行して直線の走路を走る。残り百五十、百四十、百三十――!
「ニコル!
「あともうちょっと、もうちょっと――! ニ、ニコル、負けないで、負けないで!!」
興奮のあまりに
「っ!」
レプラスィスの脚が、
全身の血が
その、あり得ない現象を前にしてもゴーダム公は顔色を変えなかった。予想外の、常識外の加速であったとしても、それは
「お前を勝利で
ゴーダム公が右手を大きく後方に伸ばし、振り上げる。残るわずかの八十メルト、最後の最後まで温存しておいたガルドーラの末脚で少年にトドメを
右手に握った馬上
「行け、ガルドーラ!! お前の最後の伸び脚を――」
「――なに!?」
そして次の瞬間、気がついていた。
自分が馬上鞭など、最初から持っていないことに。
その
『鞭は使ったことがありません。
『では、私もその考えにならうとするか』
「――はは」
最後の急加速を行わなかったガルドーラの背で、ゴーダム公は笑った。
「ははははは」
笑うしかなかった。
最後の最後で、自分がいつもの
「ははははははははは!!」
わずか鼻の分だけ抜け出したレプラスィス、それを追うガルドーラの差が縮まることはそれ以上、なかった。
二頭と
「――ニコル!」
二頭が発する
「しょ――勝者はニコル! 一着はレプラスィス! 鼻の差でレプラスィスの勝利!!」
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