その九「ねえ、ねこさん」
リルルは走った。
フィルフィナが開けた
「お
土の地面を
「フィルも片方を
「か、片方は、
「じゃあ、その
「あああ」
大型の物置の
その
「わぁっ!」
しゃあっ! と
「近づいてはいけません! 危険です!」
主人の
「母
「ああ――――」
青白い光の中に、
「
フィルフィナの
「――
フィルフィナが冷静に言う。
目が開かず、母親の体のぬくもりを
みな、体色は灰色だったり
先に産まれてきたと
「でも、なんでこの子たちがあのねこさんの子どもだって言えるの。もしかしたら、全然別の関係ない
「
「――右の、耳?」
自分たちと母
「毛の色はまちまちですが、右の耳だけは一
「…………あ!」
赤ちゃん
暗がりの横穴の中でもぞもぞと
「ああ……ホントだぁ……」
灰色の毛に、右耳だけ黒い――死んだ
「本当……本当に、みんな、右の耳が黒い……!」
それは、あの『ねこさん』が
リルル、この子たちは、
「……わたしは、あの
「あれ……は……」
フィルフィナの
干涸らびた虫――小さな幼虫、成虫、トカゲや小鳥の姿もある。この冬の寒さで
「――その手前に、最後にあの
声を
「あ……あの
声の
「自分が死んだ後も、この母
「あ…………」
フィルフィナの涙の熱に
「じ……自分はもう、ものを食べられないほどに弱っているのに、自分の命を
流すのに、
「お
「……ねこさん……」
リルルもまた、流し
体に感情の波動が広がる。
「……ねえ、ねこさんのお
リルルがずり、と身を乗り出す。
「
「お
母
そんな
建物の
横穴に
その行動にリルルとフィルフィナが目を丸くしている中、ふうっと、母
横穴に再び体を
「……あ……これは……」
母
「わたしの
「ああ……!」
リルルは思い出す。あの
「一昨日も、最後に会った時、あの
フィルフィナは
母親が
「――フィル、お湯!」
リルルが発した声に、フィルフィナは
「お湯を張って! ぬるま湯で! ――赤ちゃんを洗ってあげるお湯、
「あ、は、はいっ」
自分の
「お、お
頭上に
「ほら、お
フィルフィナが湯の用意をしている間に、リルルもそれを取るために
「
「……お
リルルが母
ないはすがなかった。
線と
それを
母
「――お
「にゃあ」
顔を上げて見つめてきた母
「お
母
「きっと、お
「そっか……そうだね……そうだよね……ねこさんはとても、お
「さ、赤ちゃんを洗ってあげましょう。あなた、お子さんを少しお預かりしますよ。心配しなくていいですからね」
出産で
「おいで、赤ちゃんたち」
乳を求めて母親のお
「ちっちゃいね……口の中に入っちゃうくらい……」
両手で包めば
「あはは、くすぐったぁい。くすぐったくて、ふわふわ軽くて……あったかいね……」
「――――」
残りの四
「――ねぇ、ねこさん」
建物と建物の
目に痛いほどに青い空。空気が
「ねこさんの子ども、ちゃんと産まれたよ。みんな元気だよ。ねこさんのお
だから、ねこさん、この子たちを見てあげて……。
ほら、見えるでしょ、ねこさん――」
天の国にたどり着けたか、はたまたそこに至る旅の
しかし、どちらにしろ天には変わりない。
天に変わりないのであれば、見えるはずだ。
小さな命をその手に乗せて、天に向かって呼びかける少女の姿が。
「ねこさん、
リルルも、フィルフィナも、再び熱く流れ出した
ただ、にゃあ、と鳴いたあの
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