その五「夜と、朝と、黒い風」
「そう、ねこさん、ちゃんといてくれてるんだ」
「はい」
用事で
「……ですが、寒くなりましたから、なるべく風の当たらない場所で、動かないようにしてやり過ごすのでしょう。姿を見る機会は一段と減ると思いますよ……」
「ねこさんは、お
何度か
背もたれを
「ねこさんのためなら、何でもしてあげるのに。ねこさん、どこにいるんだろう……」
窓ガラスの向こうでは、庭の真ん中に建てられた二本の
「そうですね……」
――あの
冬が過ぎ、暖かな春になっても姿を見せない
「……やはり、
「
リルルの応えは、期待以上でも以下でもなかった。
「いつも
「そうですか……」
フィルフィナの中で、何かが揺らぐ。だから、次の言葉が
「わたしでは、あの
フィルフィナは自分の口から出た言葉にハッとした。思ってもいなかった言葉だった。
リルルは
「あ……」
フィルフィナの口が開く。
まるで、自分で通るとも信じていない
「あの
「フィルは、あのねこさんの代わりにはならないよ」
リルルは
思いつきを口にしてしまった
「そ……そ、そうですね……」
自らの
「も、申し訳ありません……
「だからフィル、いなくならないでね」
――え?
反射的に、フィルフィナの顔が上がる。
いつもの愛らしい顔なのに、今夜だけはっきりとわかるくらい大人びた目が、フィルフィナを正面から
「フィルがいなくなって、代わりにあのねこさんが帰って
「…………」
「
リルルを産んで間もなく
「だから、フィルも
幼い少女が、まっすぐにエルフのメイドを見つめていた。
リルルの
時を
「フィルの代わりは、
「あ…………」
フィルフィナの
「わ……わたしは……」
そう思い、
ただ、アメジストの
「も……申し訳ありません……」
だから、フィルフィナは動けていた。何かが自分の中から
「本当に、くだらないことをお聞かせしてしまって……わたしとしたことが……」
「
にこ、とリルルが笑った。天使の
「それより、ちょっとお
「だ……
「量が少ないんだもん。
「ふ、ふふふ……」
体を
「ま、まったく、食べ過ぎて太っても知りませんよ。少しだけですからね」
「やった。フィル、大好き!」
「もう、仕方ないんですから……
スカートの
「お
◇ ◇ ◇
フィルフィナは考えていた。
どう伝えれば少女の
――それが、自分の
日課である
◇ ◇ ◇
東の空にまだ姿を見せたばかりの朝日が、
冬に入りかけた季節では寒そうなメイド服姿のフィルフィナが、
「カァ!」
エルフの
「カァ! カァ!」
「っ!」
フィルフィナは
「あっちいけ――――!!」
「お
カラスたちと同じ場所から、リルルの声が聞こえてくる!
「この、この、この、この――――!!」
「クァ! カァァ、カァ!!」
「リルル!!」
地を
常人の
「っ!」
「カァァ!!」
リルルを
「お
フィルフィナはリルルの元に走った。ちょうどリルルの
四羽のカラスを相手にリルルが大立ち回りを演じるなど、異常そのものだった。
「お
「あああぁぁぁ――――――――!!」
リルルの背中から
今、この
絶望と
その
「ねこさんがぁ……ねこさんがぁぁぁ――――!!」
リルルが
そして、白い
少女が
フィルフィナの
今、この
そんな願いが
「ねこさんが、死んじゃったぁぁ――――!!」
幼い少女が降らせる
いくつもの
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