その三「切り取られる、永遠」
最初は体に合わないと思ったメイド服が
人間の軍勢に
その里よりもっと
「まあ」
庭の東の
「またここでお
「
リルルの
「にゃあ」
「おや」
フィルフィナの前で立ち止まったのは、あの灰色の
「こんにちは。
「にゃ」
「そういえばあなた……お
フィルフィナの言葉を
ゆっくりとした調子で
「にゃー」
そのまま、するりとテーブルの上からリルルの
「むにゃむにゃ」
「すやぁ」
「にゃー……」
「……
少女の
できれば、この
「生まれ変わったら、わたしも
くすりと笑ったフィルフィナはふとした思いつきに手の
「さて、絵など
細い指が
しばらくの間、
ここは少女とメイドと
閉ざされた、
そんな
いくらかの時間が流れて、
「ふう」
真っ白だった紙が必要なものだけで
「……初めての割には、これはとても
切り取られた世界にあるのは、細く黒い
たったそれだけで構成された少女と、
永遠に動くことのない、永遠の世界だった。
「わたしは絵の才能もあるようです。なんと
「まったくうちのお
◇ ◇ ◇
閉ざされた世界に、
リルルは
朝、フィルフィナが
早朝、いつもの買い出しに出かけ、太陽がやや上がってきた時刻になっても、フィルフィナはそんなリルルを起こそうとはしない。少なくとも
リルルの
「おはようございます」
「にゃー」
窓ガラスの向こう側で足音がどたどたと
しがみついている
長い
「ねこさん、おはよう!」
「にゃー」
「ねこさんは
「にゃ」
「朝ごはん食べたらいっしょに遊ぼうね。朝ごはんはまだ? あれ、フィル?」
「ここにいますよ」
「あ、いたいた」
少しの
「フィル、おなかすいた。ごはんにして!」
「朝の
「おはようおはよう! これでいい?」
「はいはい、おはようございます。もうシチューは温めるだけなのですぐに朝食にいたしますよ。だからそんなに
「またシチュー? フィルはシチューしか作れないんだ」
「文句があるならシチューも
「わ、それは
「にゃー」
「まったく」
フィルフィナは勝手口に向かい直して歩き――そして、また
「そういえば……」
よくも窓からこぼれ落ちないものだという姿勢で身を乗り出したリルルのはしゃぐ姿と、その
あれだけ
「……
今も、リルルが
まるで、建物の中に入るのをよしとしていないように。
「庭が自分の領域であって、建物の中はそうではない、ということですか」
それが、
「そうなると、
動物でも持っている気高さがあるということに、フィルフィナは口元を
「わたしも見習わなくては。――さて、お
◇ ◇ ◇
しばらくの間、そんな時間が積み重なるように何気なく過ぎていった。
朝、まだ
居間での勉強の時間、一冊の教科書を開いて教授しているフィルフィナ、首を
わきまえているのか、
大して何も変わらず、安らぎだけがあり、
そんな、満月のように満ち満ちた時間。
だが、リルルもフィルフィナも、知っているはずのことを忘れていた。
――満月はいずれ、
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