番外編「リルルと、フィルと、ねこ」
その一「フォーチュネットの庭」
――これは、傷つき王都の
◇ ◇ ◇
「はぁ」
早朝のフォーチュネット家の庭、門から
空には
そんな中を、少女はたったひとりで庭を
この
そして、この
まだ六
少女をこの
もっとも少女は、その
とはいえ、リルルはあくまで少女の直接の主人であるだけで、この
ログト・ヴィン・フォーチュネット。
少女がこの
『お前が新しいメイドだと?』
顔の知らない少女が自分の留守中にいつの間にか
人間に比べて美しく
――少なくとも、人間側はそう理解していた。
里にいられない事情を持った者、
自分たちを
『
ログトはそう
『お前の名は?』
『フィルフィナと申します』
エルフの少女はそう名乗ってスカートの
ログトは
『手を見せてくれ』
エルフの少女――フィルフィナが広げて差し出した白い手を子細に見つめ、自分の
『耳だけは
『かしこまりました、
『今は険悪そのものになっているが、いずれはエルフと
そんなログトの
『では、
よほど
『……お
自分で言うのも悲しいが、
『お
出かけていく父親を見送ったリルルは、フィルフィナに満面の
『……
『前の人たち、あまり好きくなかった。本当に仕事でいるだけだったもの』
『ああ……』
エルフの少女が
『だからフィル、ずっと
にぱ、とリルルが笑う。
『
「約束……ですか……」
エルフの里で王女、それも王位
だが、リルルに見よう見まねで教えられながら
リルルひとり、自分ひとりというこの
故郷の里では、常に自分は
「にゃあ」
フィルフィナの
声がした方に
「――また、あなたですか……」
フィルフィナの
とことこと歩いて
顔立ちも愛らしい作りとはとても思えなかったが、ただ、
フィルフィナの足元に寄ってくるとその鼻先をフィルフィナの
「にゃあ、にゃあ」
「ああ、もう、あっちに行ってください」
派手に
「あなた、毎日見ますね。ここは
「にゃあ、にゃあ」
「わたしもここの使用人ですから、あまり派手なことはしたくないのですよ。
「にゃあ、にゃあ、にゃあ」
「……話が通じないみたいですね……」
元々通じるはずもないのだが、フィルフィナはこめかみに手を当て、頭を
「わたしが庭を
フィルフィナが
「……生意気な
一度、二度、三度とフィルフィナは
「なかなかやるではないですか」
フィルフィナは一度
「が、わたしとて、お
フィルフィナが
今度は必ず
「にゃっ」
相手の気配が変化したことに気づいたのか、
エルフのメイドと
「――
「フィル!」
「わ」
「ダメだよ、フィル。ねこさんをいじめちゃ」
「ね……ねこさん……?」
顔まで
「そ。ねこさん。――ね、ねこさん、ねこさん。こっちおいで」
「にゃー」
青いワンピースドレスの少女の手招きに、
「おはよう、ねこさん。
「にゃあ」
「ねこさんはいつも
「にゃー」
どう
「リ……リルルお
リルル・ヴィン・フォーチュネット
まさしく、その人だった。
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