「赦されぬ罪の告白」
それは、信じられない速さだった。
エルフの青年が高々と振り上げた
が、砂の地面を走ったその白い影は、たったそれだけの
「やめなさい!!」
横から伸びてきた手がエルフの青年の腕を
「なんだぁっ!?」
悲鳴を上げた時には、エルフの青年の背は砂浜に叩きつけられていた。白く細かい砂を
「なにをしやがる、貴様――」
「この島でなんという
「二週間前、あなたを
「エ…………」
頭から全身を
エルフの青年の顔に
親を無くした身でこの島に移って来た子供たち、その面倒を一手に引き受ける母親代わりであり、領主であるニコルが不在の時は代官を
「エヴァ先生……!」
この島で事実上の第二の実力者であるその存在に、エルフの青年は
「この国は小さな島国です。ですが、法が全てを
「で、ですが……」
エヴァはすがりつくような声を払い、ダークエルフの女――ティターニャに向き直った。
「申し訳ありません。あなたに
「う、ううう、うううう……」
法衣の
涙で
「エ、エヴァ先生、あなたはそのティターニャという女のことを知らないから、そんなことを!」
「聞かされています」
エヴァは
「この方が東の森の里で、王都でされたこと、全て聞いています。ですが、それがなんだというのです。ここにいるのは
「人が心を入れ替えられるわけがないでしょうが!」
そのエルフの青年の言葉に、エヴァの肩が
「俺はそんな言葉を信じない! 改心する、心を入れ替える、全てその場しのぎの
エルフの青年は気づかなかった。背を向けているエヴァの顔から、見る見るうちに生気が失われるのが。
「悪人は死ぬまで悪人だ! いや、死んでも悪人だ! そいつは一度死んでも
「そりゃあ……」
「信じられないのは、仕方ないよな……」
「ええ、ダークエルフですものね……」
「なにを
「やっぱり受け入れない方が安心するぜ。悪い奴はどこまでいっても悪人だよ」
「……あなた?」
「……そうですか、悪人は死ぬまで悪人、罪人は死ぬまで罪人、決して
ふらり、とエヴァが立ち上がった。まるで上から糸で
「ふ……ふふ、ふふふ……」
エヴァの
その
この場には似つかわしくないその
ただ、それを馬上から人の
二人が声をかけようとし、かけるべき言葉が思いつかずに固まっているその時間。
エヴァは静かに細く、しかし深い息を
「それでは告白させていただきます。皆様、よくお聞きください。この
両手で支えたマスクを、エヴァは目に嵌めた。
瞬間、その顔を中心にして光の
「ひうっ!」
「
予告もなければ
その代わりにいたのは、とても白い聖女とは似ても似つかぬ姿の――しかし、全くの同一人物の令嬢だった。
「これが私の、いいえ、
目の前でその
腰には
「――リロットだ」
群衆のうちの一人が
「リロットだ。快傑令嬢リロットだ……いや」
同じ口が言葉を
「リロットだけど、リロットじゃない……」
「そうだ、リロットじゃない。これは……」
「
一人が
「新聞で読んだ……去年の夏の始めに現れた、偽快傑令嬢だ!
「偽快傑令嬢だって!?」
「どうして、どうしてエヴァ先生がそんな格好をしているんですか!?」
「簡単な話です!」
豊かな
「この
全員の感情の全てを同じにしてしまうほどの
「エヴァと名乗っていたそれは
が、しかし!!
人は生まれ変われない、心は入れ替えられない、悪人も罪人も死んだところで同じまま――皆様がそう
よって
皆様、今まで大変お世話になりました!! この罪ある身が去ったあとはどうか、島の発展のために
――さあ、ティターニャさん、共に参り、共に乾いて
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