「百聞は一見にしかず、その三」
がっ、つぅん!!
「あいたぁ――――――――!!」
もの
「あっ!」
私が|道の脇に
完全に出会い
「いた、いたた、いたたたぁ――! あ、頭が割れてるぅ――!?」
「し、失礼しました、お嬢さん。これは、とんだご無礼を――」
その場で
「あ」
四十五度は開いていた。
「きゃあっ!」
反射的に膝を閉じる。完全にめくれていたスカートを
「み、み、みみみ、見たでしょ!?」
「み、見てません! 青と白のストライプなんか見てません!」
「みっ……!」
正解が男の子の口から出たことにかっと血が
「見てるじゃない! ちゃんと女の子の…………をまじまじと! ヘンタイ! のぞき魔ぁ!」
「見たんじゃありません! 見えたんです! 信じてください!」
「同じことでしょ!? さ、裁判所に突きだしてやるわ! く、くさいご飯を食べさせてあげるから!」
「そんな!
きーん、こーん、かーん、こーん……。
「わあっ!?
「あ……お嬢さん、あなたは……」
「じ、時間がないから今回は許してあげるわ! つ、つつつ、次に会ったら
スピード
「その制服、他の学校の生徒でしょ! なんでこんな所にいるのか知らないけど、真面目な顔して学校に行ってないとか不良ね!」
私は立ち上がった。スカートについたゴミを払う間も、惜しい!
「
男の子はなんか答えたようだけど、それを構っている
「さよなら! もう会わないと思うけど!」
言い捨て、頭を押さえながら私は走った。塀を越えられるポイントまで、あと少し。
◇ ◇ ◇
「――リルル、あなたがズルをしようとする場所なんてわかってるのよ!」
「わきゃ!」
塀の上にかけた足がつるりと
「正門を使わずに遅刻破りとか、リルルのくせに
「エ、エヴァレー…………」
人気のない体育館裏、五人の女子生徒が私を
「
「お、お願い、エヴァレー、
「見逃すわけないでしょう! ――チェック表!」
取り巻きから渡されたノートに、エヴァレーは赤いペンでなにかを書き込んだ。
「リルル! 今日の遅刻であなたは堂々ブラックリスト入りよ!
「えええ~~~~!! やだぁ!!」
「やだぁ、じゃないわよ!」
ばたん! と音を立ててノートが閉じられる。
「これでもうあなたの進学の道は閉ざされたわ! 高校一年で大したものね!」
「そんなぁ!」
「毎日毎日遅刻を
「ひぃぃぃぃぃぃぃ――――ん!!」
◇ ◇ ◇
「……と、いうわけで、めでたくリルルは
机に突っ
「自業自得ですね」
「もう少し友達を
「リルルのお
「そこはせめて医学賞でしょ!」
「どのみち歴史に名が残るわよ」
左隣の席のサフィーナの何故か嬉しそうな声も聞こえる。
ホームルームの開始は少し遅れていた。クラスメートはだいたい席についてはいるものの、休み時間のように
「今度から
「無駄無駄。それでも遅刻するのがリルルなのよ」
「あ――――!! もう!! エヴァレーったら私を目の
「静かにしてください。もうすぐあの巨乳がやって来ますよ」
「ホームルームの時間よ――!!」
やたら元気な声が響き渡る。胸元深くまで切れ込みが入ったスーツと、ほとんど脚の付け根まで切れ込みが入ったミニスカート姿のウィルウィナ先生が入ってきて、出席簿を
「ひぃふぅみぃよ! よ――し!! だいたい出席してるわね!」
「相変わらずアバウトな出席確認ね」
「きっと頭の栄養が全部胸に回ってるんですよ」
私は声を出す元気もない。
「喜べ、女子ども――――!!」
人生が全部丸ごと楽しそうな顔で、ウィルウィナ先生が教卓を両手で叩いた。
「今日はとっておきの、美少年転校生を紹介するわよ――!!」
「んあ?」
きゃっ、と黄色い声が教室の半分から上がり、私の目が上がった。
「それではご登場願うわ。いらっしゃい! ニコル・美少年・アーダディス君!!」
「入ります」
教室の入口からスッと入ってきたその影に、私は目を
言葉が詰まって、
固まっている私の視界の中で、その
「ただいまご紹介に預かりました、ニコル・アーダディスです。本日より、みなさんと同じ学び
「きゃああああ~~~~~~~~!!」
ぺこり、と腰が直角に折れると同時に、クラスの半分が
「可愛い~~!! 女の子みたい!! 女の子より可愛い!!」
「質問! 彼女はいますか!? お兄さんは!? 弟さんもいますか!?」
「ああ……生きていてよかった……」
「お願いです、月に十万払いますから私に
「すごいことになってますね」
「ウィルウィナ先生ったらニヤニヤして、こうなってるのを心底楽しんでるんだわ」
「あのおっぱいの
「お祭り好きな先生だものね――」
そんな、中。
「あああああああああああ――――――――!!」
考えるよりも先に私は
「あなた、さっきのパンツのぞき魔ぁ――――!!」
「あっ」
「ああ……あなたは……!」
美少年――ニコルも私の顔を見て
「ええっ!? パンツのぞき魔!?」
「そんな……
「リルルのパンツを見せられるなんて、なんてひどいことを!!」
「私の方が被害者なのよっ!!」
「誤解です! 不幸な事故だったんです!」
「なんだ、不幸な事故か」
「なんで一瞬で誤解が解けるのよ! 誤解だけど! もうちょっと引っ張りなさいよ! 私の立場がないじゃないのっ!」
「ニコル君可哀想……リルルのダサいパンツなんか見せられて……あとで口直し……じゃなくて目直しさせてあげるね……」
「うがぁ~~~~~~!!」
「はいはい、リルル
「大人しく
「ふがっ!」
しゅっ! とフィルが投げた飴が口の中に入り込む。
「むむむむむむむむ(あんたたち、あとで覚えてなさいよ)!!」
「はいはい、いってることわからない」
「さて、注目のニコル君の席はどこにしようかしら!
組んだ腕で大きなおっぱいを支えているウィルウィナ先生が、ニヤリと笑った。
「いつも思うんだけど、よくあの深いスリットのスーツやスカートで下着が見えないものね?」
「着けてなくて
横でまた囁き合っているサフィーナとフィルの声を聞きながら、私は生きる気力をなくしていた。
もう、どうでもいい……。
「先生、ここ! ここが
「うがぁ!」
サフィーナの後ろに座っていた男子生徒が、隣の女子生徒に
「おい! 俺の机だぞここは!」
「知ってるわよ! だから蹴り落としたんでしょ! あんたみたいな顔面
「ひでぇ!」
「じゃあ決まりね! ニコル君はそこに座って!」
「わかりました、先生」
「あー、一応念のためにいっておくけれど、学校の中では不純異性交渉はしないこと! 先生もまだクビになりたくないからね! 学校外なら大いにやってよし! くれぐれも
いいたいことをいいたいだけいったウィルウィナ先生は、スカートの下のくっきりと浮かんだおしりを振りながら盛大ハミングを振りまきながら出ていった。
「頭ん中
「もう夏も近いしね」
「…………うー……(飴舐め中)」
「――リルルさん、ですね?」
私の視界に、影が差した。
口の中の飴を
金色の美少年転校生がいた。
「……なによ!」
「先ほどは本当に失礼しました。
「お詫びなら何回も受けたわよ! もう私に話しかけないで! そうしたら許してあげる!」
「では、またのちほど」
ニコルが席に着く。その途端にあっという間に周囲の女の子のターゲットにされていた。ほとんどアリに
「あれれ~~え? リルル、なんか気になる
「あの
「してないっ!!」
私は大判の教科書を広げ、頭から
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます