第20話 約束。
寺田さんは早退したり、一週間に一回休むようになったり、そのうち二日に一回、一週間学校に来ないときもあった。クラスメートたちはもちろん、平野も寺田さんが休んでいる理由を知らなかった。
「ほんさん、寺田さんは?」
「僕も分からないよ」
「本当に? 寺田さんと最近、仲良かったから知っているかと思ってたよ」
「うん、まぁね」
僕も実は、寺田さんが休んでいる理由を知らなかった。ときどき、寺田さんから連絡は来る。その文面からは、相変わらず元気な様子が伝わってきた。僕は学校に来れない理由を聞くことはなかったし、彼女からも理由を明かすこともなかった。僕たちはそのことを避けるように学校での話題だったり、課題の確認をしあっていた。
学校内では必要があれば話す程度で、以前みたいに一緒に帰ったり、廊下で突然名前を呼ばれることはなくなった。
クラスでは寺田さんの存在が薄くなっていき、僕らは三年生に進級した。多くの人は次の歩むべき道に向けて努力する。僕と寺田さんは別々のクラスになった。三年生のある日、プツンと連絡は途絶えた。
今でも、寺田さんとの最後の連絡を見返すことがある。
ねぇ。まだ、あのときの約束、覚えてる?
お互いに一番のファンでいようね、って約束?
ううん、それじゃなくて。覚えてないのかぁ~笑
覚えてないなら、しょうがないね笑
本当は覚えていた。なんだか恥ずかしかったのもあるし、これから先も、連絡をとり合うと思っていたから。
だから、僕はあのとき覚えてないふりをしたんだ。
ねぇ。あのときの約束、いつ果たせばいいかな。
僕はテレビの中にいる、ひときわ輝く背中に向かって呟いた。
約束 @isa00
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます